2023 Fiscal Year Annual Research Report
仁和寺蔵御室版両部曼荼羅の版木と版本に関する総合的研究
Project/Area Number |
21K18333
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
森 雅秀 金沢大学, 人文学系, 教授 (90230078)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 御室版 / 版木 / 印刷技術 / 仁和寺 / 階明寺 / 曼荼羅 / 密教図像 |
Outline of Annual Research Achievements |
御室版両部曼荼羅は、明治初年に京都の御室仁和寺の塔頭寺院、皆明寺で開版・刊行された両部曼荼羅の白描図である。金剛界と胎蔵界の両部曼荼羅のすべての仏(尊格)が版木に彫られ、その数はおよそ300面を数える。本研究は(1)データ採取と現状の記録、(2)版木と版本の比較研究、(3)版木の制作の背景と関係資料との比較研究、(4)資料の保全と活用の検討という4つの柱を持つ。最終年度である2023年度は、前年度からの継続課題である(3)と、あらたに(4)資を進めた。 (3)については、(2)で行った仁和寺が所蔵する版木と、そこから摺られた複数の版との比較から、版木、初版本、再版本とのあいだの異同が、前年度に明らかになったことをふまえ、相違点を明確化し、その変化のパターンを明らかにした。その結果、版木が完成した状況を反映する第一段階と、その後の改版の跡を示す第二段階が存在し、それぞれの段階での関係者の意図をある程度推測することが可能となった。また、現在御室版として発表されているいくつかの印刷物のあいだに混乱が見られ、それらを是正したいわゆる「決定版」の公表が必要であることを確認した。 (4)については、御室版の版木の学術的意義を今回の研究によって明確にすることができ、所蔵元である仁和寺と、資料の保存と活用について具体的な方針を議論し、すみやかに実施に移すことを検討する段階に入った。そのための基礎資料として、すべての版木の写真データをふくむ本研究の報告書を、可及的速やかに出版する準備を進めている。
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