2021 Fiscal Year Research-status Report
ベルギー・オランダ語圏のテクストにおけるポリグロシアの日本語翻訳に関する研究
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21K18366
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
井内 千紗 拓殖大学, 商学部, 助教 (30700132)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ベルギー / 翻訳 / オランダ語 |
Outline of Annual Research Achievements |
<課題1>ポリグロシアに関する調査・分析 ベルギー・オランダ語圏(フランダース)の文芸作品の中でも特に、現代文学の歴史や地域的特性について、先行研究を収集した上で、ポリグロシアに関連する概念や理論の洗い出しをおこなった。現時点でオランダ語文学におけるポリグロシアに焦点を置いた研究はほとんど実施されておらず、分析や考察の手がかりをつかむため、翻訳研究における「多言語」をキーワードにする理論から、当該研究におけるポリグロシアの位置付けや捉え方を整理した。 また、本研究の大きな背景であるベルギーの言語事情と文芸作品の関係を探るため、事例研究をおこなった。令和3年度は20世紀のベルギー幻想文学を代表するバイリンガル作家、ジャン・レー/ジョン・フランダースを取り上げた。同作家は同じ国内であっても言語によって異なるアイデンティティを確立しており、その影響から、予想に反してフランス語、オランダ語それぞれのテクストにおいて相互の言語の影響はほとんど見られないことが明らかとなった。この成果の一部は、令和4年3月25日発行の「拓殖大学論集(326)人文・自然・人間科学研究 第47号」に研究ノートとして発表した。 <課題2>蘭和翻訳の通事的展開に関する調査 洋学および蘭学に関する先行研究から、オランダ通詞の活動を中心に蘭和翻訳の歴史的展開を整理した。現時点で調査した先行研究からは、オランダ通詞が外交や貿易に関する文書、新聞、そして論点はややずれるがオランダ語習得を目的とする翻訳や辞書の編さんをおこなってきたことを確認した。しかし、最初に日本語に翻訳されたオランダ語文芸作品を特定するに至っておらず、手がかりをつかむため、言語の範囲を広げ、西欧文学の日本語翻訳に関する歴史も調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症対策の影響により、令和3年度は当初予定していた現地での調査を実施できなかった。そのため、インターネットを活用し、調査に必要な文献の入手を試みたが、特にオランダ語の文献を販売している書店は日本への郵送に対応していない場合が多く、計画通りに資料を入手できていない。そのため、調査全体に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に引き続き、文芸作品に見られるポリグロシアの理論について分析を行いながら、令和4年度は分析対象となる作品のリストアップに着手する。また、日本において初めて翻訳出版されたオランダ語文芸作品について、調査を継続する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大およびその対策による海外渡航制限の影響を受け、当初計画していたベルギーおよびオランダ現地での調査が実施できなかった。また、国内での研究集会は全てオンラインでの実施となったため、国内の旅費の支出も発生しなかった。翌年度は現地へ渡航しての現地調査を実施し、遅れが生じている資料や情報の収集を行う。
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