2021 Fiscal Year Research-status Report
少数者の恐怖―グローバル化時代の新たなエスニック・リスクに関する学際的研究
Project/Area Number |
21K18419
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
滝澤 克彦 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (80516691)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
コンペル ラドミール 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (90528431)
伍 嘉誠 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (90808487)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | エスニック・リスク / マイノリティ / テロリズム / 暴力 / エスノスケープ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、新型コロナウィルス流行の影響により、国外における調査や対面的な国際会議を実施することができなかった。各メンバーは、自身の調査地を中心に、マイノリティに対する脅威の高まりと潜在的危険性、国家の対応策とその影響、NGOなどの関与等について調査を行い、その成果について主にオンラインで開催された国内外の会議や学術雑誌等で発表した。2021年9月には、国際会議New Nationalisms and Changing Patterns of Conflict(国際政治学会紛争安全保障民主化委員会と共催)を開催した。 滝澤は、現在のモンゴル国におけるエスニック・リスクとしてのナショナリズムの高まりについて、社会主義時代の粛清をめぐる歴史的言説を対象として分析を行った。特に、民族の歴史における「死者」をめぐるイメージが政治問題化され、特定の対立に結びつけられていく様態について明らかにした。 コンペルは、軍事占領下におけるエスニック・リスクに着目して文献調査を行った。日本占領における占領者と被占領者間の緊張関係やエスニシティの関係を踏まえた上で、現代アフガニスタンあるいはイラクにおける紛争と占領、さらに南アフリカにおけるエスニック・リレーションズと地域紛争・核拡張政策との関係についても調査した。比較論的観点から軍事占領下におけるエスニシティおよび軍民関係について分析した成果は、国際政治学会リスボン世界大会(オンライン開催)にて発表した。 伍は、コロナ禍の香港において、ソーシャル・スティグマ化された少数者(感染者、医療関係者、貧困層など)の現状や、ワクチン接種をめぐる香港社会の対立について考察した。特にワクチン接種の実施初期に、ワクチン支持派と反対派がお互いに批判し、相手のワクチン接種に対する態度を政治的な立場に結び付けようとする「相互スティグマ化」の現象について分析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、新型コロナウィルス流行の影響により、当初予定していた国外における調査や対面的な国際的学術交流を実施することができなかった。代替的な手段による研究を遂行し、オンラインを活用した学会や会議での発表を実施したが、当初の構想に比べて不十分なものとならざるを得なかったことは否めない。2022年度には、その点の遅れを取り戻すために、状況を見ながらできるだけ当初の予定通りの調査や学術交流を実施していきたい。また、それが適わなかった場合のより効果的な代替的手段についても検討する。
|
Strategy for Future Research Activity |
現時点で各メンバーのそれぞれの調査対象地域における考察は進められているが、それらの比較を通した超地域的かつ学際的な議論のプラットフォーム形成が今後の課題となる。そのために、2021年度に実現できなかった対面での学術交流を、国外の対象地域において現地訪問を兼ねた国際会議を開催し、領域横断的に研究者を招聘することによって実現する。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では、2021年度予算の執行は、ニュージーランドにおける現地調査および国際シンポジウムの開催にかかる旅費が大部分を占めていた。しかし、新型コロナ感染症の流行のために、現地調査を実施できず、その他の情報をもとにした分析や研究で代替し、国際会議もすべて規模を縮小したオンラインの開催とせざるをえなかった。2022年度には、2021年度実施できなかった現地調査を実施し、対面による国際会議を開催する予定である。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] Security and Safety in the Era of Global Risks2021
Author(s)
Radomir Compel, Rosalie Arcalla Hall, Yuko Suda, Federica Infantino, Michael Minkenberg, Theodor Neethling, Lyailya Nurgaliyeva, Tadanori Inomata, Sergio Luiz Cruz Aguilar, Hazuki Sasaki, Yasmin Calmet, Tiago Tasca, Yea Jen Tseng, Cristina Valeria Puga Alvarez
Total Pages
260
Publisher
Routledge
ISBN
9780367651879
-
[Book] Risks, Identity and Conflict: Theoretical Perspectives and Case Studies2021
Author(s)
Steven Ratuva, Hamdy A. Hassan, Radomir Compel, Michael Blain, Angeline Kearns-Blain, Masaki Kataoka, Mohd Aminul Karim, Jovanie Camacho Espesor, Sergio Luiz Cruz Aguilar, Ryo Nakai, Hiroko Kinoshita, Dai Yamao, M. Bashir Mobasher, Hala ThabetMiho Fukui, Chigumi Kawaguchi, Kalyango Ronald Sebba
Total Pages
390
Publisher
Palgrave
ISBN
9789811614859
-