2021 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of nonlinear Schrodinger equation on network
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21K18588
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
瀬片 純市 九州大学, 数理学研究院, 教授 (90432822)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 関数方程式 / ネットワーク / 調和解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は, ネットワーク上の量子的粒子の運動を, グラフ上で調和解析の理論を構築することで研究することである. 六角結晶状の物質であるカーボンナノチューブ, 屈折率が周期的に変わるナノ構造体であるフォトニック結晶など, 約30年程前よりミクロン以下という非常に小さなグラフ状の構造を持つ素材が開発され始めた. それらの材料の特性を探るため, グラフ上での量子的粒子の運動の解析が注目されるようになり, 工学のみならず数学的な立場から, 主に線形の偏微分方程式を通して研究されている. 本研究ではグラフ上の非線形シュレディンガー方程式を通して, グラフ上で非線形相互作用を伴う量子的粒子の運動を解析する. 特に, 方程式の適切性や解の長時間挙動という観点からグラフ上の非線形シュレディンガー方程式を研究する. 今年度は, 本研究のファーストステップとして, グラフ上の非線形シュレディンガー方程式に対し, どのようなグラフの形状のもとで適切となるか?という適切性の問題について考察した. 適切性とは, 解の存在と一意性, 初期値連続依存性をさすが, 方程式の適切性を調べるためには, ネットワークの形状だけでなく, 量子的粒子が頂点を経由して他の辺に移る際の規則(接続条件)を指定する必要がある. グラフが星型で接続条件がキルヒホフ接続条件という状況下ではいくつかの結果が知られているが, 本研究ではより一般のグラフ上で方程式の適切性を考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフ上の非線形シュレディンガー方程式については, 上で述べたようにグラフが星型で接続条件がキルヒホフ接続条件という状況下では取り扱われているものの, より複雑なグラフ上ではまだ扱われていない状況である. 一方, グラフ上の非線形放物型方程式については, グラフがループを持つような場合にも進行波の挙動などが調べられており, 研究が進んでいることがわかった. 本年度は, 主に情報収集という段階であったが, 次年度以降の研究の方向性を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は, 今年度に引き続きグラフ上の非線形シュレディンガー方程式の適切性について研究するとともに, 本研究のセカンドステップとして, 同方程式の解の長時間挙動について考察する. 特に各頂点における接続条件やグラフの形状が解の長時間挙動にどのような影響を及ぼすか?という観点から解の挙動を解明する. ユークリッド空間上の非線形シュレディンガー方程式の解の挙動の研究は, フーリエ解析や擬微分作用素論など, ユークリッド空間をベースとした調和解析の理論に非常に依存しており, これらの手法をグラフ上の方程式に適用することは一般に困難である. そこで, グラフ上で調和解析の理論を構築することでネットワーク上の非線形シュレディンガー方程式の解の長時間挙動について明らかにする. また非線形量子ウォークなどの解の長時間挙動についても考察する.
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Causes of Carryover |
本年度は, 偏微分方程式や調和解析, グラフ理論など本研究課題に関連する研究集会(京都大学数理解析研究所研究集会「調和解析と非線形偏微分方程式」など)に参加する目的で, 本年度の研究費のほとんどを旅費に充てていたが, 新型コロナウイルスの影響で参加を予定していたほぼすべての研究集会がオンラインとなった. 次年度は参加予定のいくつかの研究集会が対面形式での実施になると見込み, 本年度の研究費を次年度に使用したいと考えている.
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