2022 Fiscal Year Research-status Report
赤外マルチファイバー技術と先端分光技術の融合で惑星展開を目指す小型赤外分光器開発
Project/Area Number |
21K18640
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
笠羽 康正 東北大学, 理学研究科, 教授 (10295529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平原 靖大 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (30252224)
中川 広務 東北大学, 理学研究科, 助教 (30463772)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 赤外ファイバー / 赤外分光 / レーザー分光 / ヘテロダイン分光 / フーリエ分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度に引き続いて、以下を実施した。 (A) 赤外線ファイバーの光路結合・分割技術開発: (a1/a2) 中空光ファイバの適切な特性評価を行う光学系の確立、それによるコヒーレントなレーザー光による高効率伝送の実証検証、およびインコヒーレントな太陽光による高効率伝送の実証確認について、口頭発表(塚田+ 2022)および査読論文(Nakagawa+ 2023)に結果をまとめた。(a3) 中空ファイバーバンドル開発に引き続き取り組んだ。シーリングとリフォーカスに用いる赤外透過型マイクロレンズアレイ(非球面平凸レンズアレイ 1mmφ×10)により、シース材料が不要で近接配置可能な2次元バンドルHCWの試作・性能評価を実現させた。 (B) 分光システムへの結合: (b2)ヘテロダイン分光: 実証確認について、講演(塚田+ 2022)および査読論文(Nakagawa+ 2023)に結果をまとめた。これを基礎に、ミラーを多用し大型・複雑となっていた従来光学系から離れ、同等のシステム雑音温度(10μmでショット雑音限界に迫る約3,000 K)を実現可能な小型中間赤外分光器の設計を行った。2022年度末にはそれに要する光学・電子部品を調達して組み立てを開始した。(b4)フーリエ分光:この組立に要するハードウェア(波面分割型位相シフト干渉計ユニット)およびイメージングスペクトル解析ソフトウェアの評価と改良を製造メーカー(日進機械)からの支援も得つつ進め、講演(根岸+ (JpGU、2022)、趙+ (2022)]でその結果をまとめた。また、将来の宇宙展開も見越して、より広帯域で感度を有するボロメータアレイカメラと、真空環境下で動作可能なピエゾアクチュエータを導入して、波長分解能R~100(λ=8μm)、空間分解能~0.1mmを維持しつつ、より広い波長範囲(4~18μm)でのイメージングスペクトルが取得可能な、真空対応波面分割型位相シフト干渉計の製作を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宇宙展開に要する「設計の透明性」「耐環境性」を得る技術的難易度が高く、2023年度末に即座に宇宙展開しうる地点まで到達することはできないことがわかってきたが、これは収穫である。 その手前とはなるが、2022年度末に到達を目指した以下の項目において確実に前進を得ている。 (A) 赤外線ファイバーの光路結合・分割技術開発: 中空ファイバー開発を進める共同研究先の富山大訪問をCOVID制約から延期してきたが、ようやく2022年夏に実現した。このため、ファイバー光学系の特性・使い方および今後の開発方向を確立することができた。 (B) 分光システムとの結合: (b2)ヘテロダイン分光: 中空光ファイバとファイバカプラを組み込んだ「ファイバーレーザーヘテロダイン分光器」の実証機設計・組立にはいることができた。 (b4)フーリエ分光: 2次元イメージングを伴うフーリエ分光器は、ピンホール視野の通常のフーリエ分光器とは駆動・データ処理の方式が異なる。2021年度に導入したシステムにより、波長校正方式の確立を含め「実用精度を伴う分光器」としての成立性を得るところまで来た。また将来の宇宙展開において最初の課題となる真空対応化についても一定の目処を得るところまで来た。その手前の応用として、真空中での低温環境計測を要する太陽系氷衛星表層を覆う模擬物質の分光、および将来赤外線宇宙望遠鏡に要する中間赤外線透過光学部材の二次元分光撮像評価の試行にも着手した。これらについては、講演(根岸+ (天文学会、2022)、古賀+ (2023)]で報告も行った。 最終年度は、具体的に動作が可能な実証装置を構築する。また、実際の宇宙展開に必要な小型化・軽量化 (10x10x10cm、<1-kgが目標となる)、耐環境性、材料・設計の透明性、オンボードデータ処理性、省電力性の実現にあたって障害となる事項の解決に向けて、関係する要素技術を擁する部品メーカー等とのコンタクトも含めつつ検討を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度までの成果を基盤に、地上観測・実験室利用も可能な「実証機」を構築する。 (A) 赤外線ファイバーの光路結合・分割技術開発: (B)の実証機への実装を通して、実用上不可欠となるファイバー実装技術を蓄積していく。 (B) 分光システムとの結合: <B1>レーザー分光/<B2>ヘテロダイン分光: 「ファイバー混合器」+「ファイバー」で小型・高効率・高安定化を図りうる分光装置の実証機を組み立て、2023年度内に太陽光を用いた地球大気分光観測、地上望遠鏡を用いた惑星大気分光観測による性能実証を実現させる。 <B3>グレーティング分光>/<B4>フーリエ分光:ファイバーバンドル結合による多点計測機能付与を目指す。特に広帯域化が容易なフーリエ分光について、「真空・広波長カバー」化した "室内実験・測定用の実証機" を組み立て、2023年度内に惑星表層材料模擬物質や将来宇宙望遠鏡用光学素子の波長特性測定による性能実証を実現させる。この実証試験は、2022年度に論文出版したimmersion-echelleグレーティングのsimulation評価をを基礎として、波長10-20μmでの高分散グレーティングの候補材料の極低温での光学特性(吸収係数および屈折率)の精密測定にも援用予定である。<共通>「10cm角xα」という近年の超小型衛星搭載サイズに合わせ、小型化(・軽量化)を要する技術要素の洗い出しを進める。また真空以外の耐環境(熱、振動、放射線等)の対応を要する可動部・電子部など対応を要する技術要素の洗い出しを進める。障害となることがわかってきた小型化・軽量化、耐環境性(特に耐振動・材料)、材料・設計の透明性(特に電気設計)、オンボードデータ処理性(特にフーリエ分光器は、ワンショットで >100MBの大量データを生産し、高速オンボード処理が必須)、省電力性(データ処理も含め<10Wを目標)の実現障害となる事項の解決方式の検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
東北大側主担当の作業においては、2022年度末からファイバーヘテロダイン分光器・実証機の構築に入っており、2023年7月の仙台市天文台における実証試験に向けて必要となる光学部品・電子部品などの消耗品経費に充当する予定である。 また、名大主担当の作業においては、現在組み上げ途上にある真空対応遠赤外線波面分割型位相シフト干渉計の構築に必要な、光学部品・電子部品・真空部品などの消耗品(Covid制約の緩和に伴う長納期部品を含む)の購入経費に充当する予定である。
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