2023 Fiscal Year Annual Research Report
水工学と都市計画学の融合による総合的治水対策の評価システムの構築
Project/Area Number |
21K18747
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 智大 京都大学, 工学研究科, 助教 (20793798)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 温 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (30293963)
横松 宗太 京都大学, 防災研究所, 准教授 (60335502) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
|
Keywords | 立地選択モデル / 洪水リスク / 流域治水 / マルチエージェントモデル / 交通利便性 / コンパクトシティ / 立地適正化計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動の影響によって近年、水災害が激甚化しており、流域治水によって総合的な洪水リスク管理を行うことが求められている。一方、都市政策においては公共施設の効率性の観点からコンパクトシティが推進されており、満足度が高くかつ水災害リスクを抑えられる立地政策が希求されている。ところが、居住誘導施策のもつ水害リスク低減効果を評価する手法は確立しておらず、水害リスクを考慮した具体的な誘導施策や実施地点を検討するための知見も少ない。本研究では、居住誘導施策のもつ水害リスク低減効果を動的に評価する枠組みの構築を目指し、立地選択の主体である住民の立場での意思決定をボトムアップにシミュレーションする手法としてエージェント型立地選択モデルを開発するとともに居住誘導施策のシナリオ分析を実施した。まず、住民の主要な立地選択因子である公共交通利便性に基づくアメニティ指標を提案し、地域の魅力を考慮した立地選択モデルを開発した。その結果、シミュレーションによって現況の住宅価格の空間分布をある程度再現できるようなった。次に、異なる居住誘導エリアを開発する政策シナリオに対して開発した立地選択モデルを適用し、各シナリオにおける水害リスク低減効果を比較した。水害危険度およびアメニティ量に着目した居住誘導エリアの比較を行った結果、水害リスクの低いエリアにおける施策は、水害リスクが高くアメニティが低いエリアからの居住を促進する効果があり、対象地域全体の水害リスク低減に寄与する可能性が高いことがわかった。一方で、災害に脆弱な低所得者の水害リスクに関しては、低リスクエリアでの誘導施策によって必ずしも減少するとは限らないことが示された。また、低所得者のリスクを減少させるには、アメニティ量が低い地域での施策を行うことが効果的である可能性が示唆された。
|