2021 Fiscal Year Research-status Report
Role of predator-prey interactions between magnetotactic bacteria and eukaryotic microorganisms on global iron cycle
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21K19071
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田岡 東 金沢大学, 生命理工学系, 准教授 (20401888)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 磁性細菌 / 鉄循環 / 微生物生態 / 生物間相互作用 / 磁気感知 / 環境細菌 / 原生生物 / バイオミネラリゼーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、水圏生態系の鉄循環における磁性細菌の役割を評価し、磁性細菌の生態系への未知の貢献を検証することを目的とする。鉄は、生命活動に必須の元素であるが、食物網において鉄循環を支えている微生物の実態はよく分かっていない。磁性細菌は、細胞内に一般的な細菌の百から千倍の鉄を含んでおり、淡水及び海水環境の鉄の生産者の役割を担うことが期待される。しかし、環境中で磁性細菌がどのような生物によって摂餌され、磁性細菌由来の鉄が食物網や環境にどのような影響をもたらすのか、磁性細菌を生産者とする生態系に関する研究はこれまで報告されていない。 そこで、本年度は淡水環境における「磁性細菌食者」の種同定を目的に研究を行った。Magnetospirillum属の磁性細菌が生育する淡水池から微生物群集を含む底泥試料を採集した。そこに培養した磁性細菌M. magneticum AMB-1の細胞懸濁液を加え、一定期間培養し、環境微生物による磁性細菌の捕食を促した。その後、試料から磁石に濃集する微生物を単離したところ、繊毛虫と思われる原生生物が多数採集できた。得られた、細胞からゲノムDNAを抽出し、PCRによって増幅された18Sリボソーム遺伝子をコードするDNAを増幅し、塩基配列を決定したところ、繊毛虫Coleps amphacanthusの塩基配列と98%相同な配列が得られた。磁石に濃縮される微生物は、尾部の棘状突起や板状構造に覆われるなどColeps amphacanthusの形態的特徴を示したことから、Coleps属の微生物が「磁性細菌食者」であることがわかった。現在は、磁性細菌の捕食が環境微生物群集に及ぼす影響をPCR-変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(PCR- DGGE法)を用いて調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
磁性細菌M. magneticum AMB-1を微生物群集を含む底泥試料に添加し、環境微生物による磁性細菌の捕食を促し、磁石を用いて磁性細菌を捕食した微生物を濃集したところ、磁性を示す多くの繊毛虫を採集することに成功した。このことは、磁性細菌を捕食する微生物を網羅的に採集できることができることを意味しており、磁性細菌の生態系における役割を調べるために重要な方法を確立できた。また、得られた微生物の同定を行ったところ、Coleps amphacanthusと近縁な原生生物が磁性細菌の捕食者として初めて同定された。以上のように当初の研究計画より順調に進行しており、成果が出ているため「当初の計画以上に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
水環境中で、磁性細菌が原生生物に捕食されることで、捕食した原生生物細胞から生物利用可能な可溶性鉄が環境中へ供給されるかもしれない。磁性細菌の捕食により、環境中で利用可能な鉄資源が増加することで、微生物生態系に利益をもたらす可能性がある。次年度以降は、磁性細菌の原生生物による捕食が環境微生物群集へどのような影響を及ぼすかを解析する。具体的には、磁性細菌を添加した実験区と、一般の細菌を添加した実験区を設け、微生物群集の変化を、18SリボソームRNA遺伝子(真核微生物群集)及び16Sリボソーム遺伝子(細菌群集)を用いたPCR-DGGE法によって解析する。
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Research Products
(6 results)