2022 Fiscal Year Research-status Report
Role of predator-prey interactions between magnetotactic bacteria and eukaryotic microorganisms on global iron cycle
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21K19071
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田岡 東 金沢大学, 生命理工学系, 准教授 (20401888)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 磁性細菌 / 鉄循環 / 微生物生態 / 生物間相互作用 / 磁気感知 / 細菌 / 原生生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、水圏生態系の鉄循環における磁性細菌の役割を評価し、磁性細菌の生態系への未知の貢献を検証することである。本年度は、磁性細菌が原生生物に捕食されることが環境中の微生物群集の細菌種構成に及ぼす影響を調べた。実験室内に、淡水池を模した微生物群集を含む水槽を作製した。その水槽に、磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB-1または大腸菌の菌体を添加した。その後、1ヶ月に渡って定期的に水槽の微生物群集を採集した。得られた試料からゲノムDNAを抽出し、真正細菌特異的プライマーを用いて、細菌群集の16SリボソームRNA遺伝子をコードするDNAを増幅し、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法を用いて細菌の種構成の変化を調べた。その結果、AMB-1および大腸菌のバンドは、添加後7日程で消失することから、添加した細菌が捕食されたことを確認した。興味深いことに、磁性細菌を添加した区画では、大腸菌を添加した区画と比べて微生物群集を構成する細菌種数が大きく増加することがわかった。この結果は、磁性細菌が原生生物に捕食されることが微生物群集の多様性に影響することを示唆している。現在、どのような細菌種が磁性細菌捕食の影響を受けたのかをDNAシーケンスを行って調べている。一方、磁性細菌のモデル生物であるAMB-1を原生生物のモデル生物であるT. pyriformisに実験的に捕食させた。その結果、AMB-1を捕食したT. pyriformis細胞内の鉄濃度が上昇するとともに、培養液中の可溶性鉄濃度が上昇することがわかった。AMB-1細胞に含まれる鉄の約4%が可溶性の状態の鉄として細胞外に放出された。この結果は、原生生物による磁性細菌捕食が、他の微生物に鉄資源を供給するという仮説を支持しており、論文発表した(Environ. Microbiol. Rep., 2023)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原生生物による磁性細菌捕食が環境中の可溶性鉄濃度の上昇に寄与することを実験的に示すことに成功し、その成果を論文発表した。また、磁性細菌M. magneticum AMB-1を淡水池を模した水槽中の微生物群集に添加したところ、微生物群集を構成する微生物の種構成が変化することを示した。これらの成果は、本研究の作業仮説として提唱した原生生物による磁性細菌捕食が、他の微生物に鉄資源を供給するという仮説を支持している。以上のように研究計画よりトラブルなく順調に進行しており、成果が出ているため「概ね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、磁性細菌の原生生物による捕食が環境微生物群集へどのような影響を及ぼすかをさらに詳細に解析する。具体的には、磁性細菌M. magneticum AMB-1を添加した実験区に加えて、磁性細菌に含まれる鉄量と同じ量の可溶性鉄及びマグネトソームを添加した実験区を設置し、それらの微生物群集構成への影響を調査する。これにより、磁性細菌が原生生物に捕食されることの微生物群集に及ぼす影響をさらに分析する。また、磁性細菌捕食により影響を受ける細菌種の同定を試みる予定である。これらの研究により磁性細菌の鉄資源供給者としての役割を検証する。
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Research Products
(11 results)