2021 Fiscal Year Research-status Report
Multi-profiling of Jomon people's nutrition, hygiene, and health status by coprolite genome analysis
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21K19289
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 博樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40401228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅崎 昌裕 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (30292725)
澤藤 りかい 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 日本学術振興会特別研究員(CPD) (50814612)
和久 大介 東京農業大学, 国際食料情報学部, 助教 (60793578)
熊谷 真彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 高度分析研究センター, 主任研究員 (80738716)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 糞石 / ゲノム / 縄文人 / 摂食物 / 次世代シークエンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥浜貝塚遺跡から出土した糞石をもちいた次世代シークエンサ(NGS)によるPCRアンプリコン・シークエンス法で、科レベル(イネ科、ナスか、セリ科など)、属レベル(ネギ属など)、種レベル(ダイズ、ニンニクなど)で現代の私達が食品としてもちいている植物が検出された。またその周辺土壌からDNAを抽出した同様の手法での実験では、ほとんどのリードがイネ科ヨシ属として検出された。これらの結果から、PCRアンプリコン・シークエンス法により植物性摂食物が検出できていると考えている。また、これら糞石から検出される摂食物由来と思われるDNAは、どのような性質をもつのか、現代人の糞便をもちいた実験によって調査した。東京在住の現代日本人(n=1)について、18日間の食事記録と、後半10日間の採便を行い、上記と同じ方法で解析をおこなった。その結果、検出されやすい食材と検出されにくい食材があることが分かった。さらに、ダイズに着目し、現代日本人(n=1)について、調理したダイズ食品(納豆)を7日間、食べ続け、次ぎの5日間、ダイズが入った食品の摂取を避け、この5日間の糞便について、上記と同じ方法で解析をおこなった。その結果、8日目には40リードのダイズDNAが検出されたが、9日目には1リードに減少し、残りの3日間も低い検出量だった。調理しないダイズ食品(枝豆と炒り豆)を2日間で200g接触した翌日には、114リードのダイズDNAが検出されたが、その翌日には1リードに減少した。このように、ダイズの摂取を止めた2日後には、ダイズDNAはほとんど検出されなくなることから、腸内への摂食物DNA残留は、2日後以降ごく僅かである可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年までに、キャプチャー・ベイトの作製が完了し、ライブラリーの調製が完了すれば、すぐに使える状態になっている。また、研究分担者との共同作業により、地域性や植生分布を考慮した動植物同定技術の改良を進めることができた。また、現代人の糞便資料を用いて、体内に取り込まれた摂食物のDNAが、どの程度(量)どれくらい(期間)、腸内に滞在し、糞便ゲノムに含まれるか、基本的なデータが得られてた。このように、おおむね順調に進展している。一方、DNA濃度の既に分かっている複数の植物性食材(6種)のDNAを混ぜて、NGSライブラリーを作製し、キャプチャーする実験で、糞石から抽出できるDNAと同程度の濃度にまで希釈した混合DNAの場合、著しく低いDNA濃度のため、ライブラリ作製そのものが困難であることが明らかになった。このため、低濃度DNAを濃縮し、ライブラリ作製に問題ない濃度にする課題が新たに生まれた。
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Strategy for Future Research Activity |
糞石から抽出したDNAのような低濃度のDNAから如何にNGSライブラリーを作製するかが、現在の課題である。そこで、遠心エバポレータを使ったDNA濃縮の条件検討を進める。すなわち、遠心エバポレータでは、設定温度と時間を変化させ、どのような条件でDNAを濃縮すれば、より効率的にライブラリーを作製できるかを検討する。また、こうして作製できたライブラリーを、最も効率のよくキャプチャーできる条件を検討する。すなわち、キャプチャーをするミクスチャーにインプットするライビラリーの量、そして、非特異的な結合をできるだけ避けつつハイブリダイズする温度、主にこれら2つの条件を検討する。
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Causes of Carryover |
キャプチャー・ベイトの作製が完了したが、キャプチャー実験の条件検討をする以前のライブラリー作製段階で、低濃度DNAのため、NGSライブラリーが作製できない課題が生じた。このため、キャプチャー・ベイトをほとんど消費することなく、追加注文をしなかった。また、キャプチャーに続くNGSの外注も行うことができなかった。このため次年度にこれを使用することとなった。これらの条件検討を進め、今後これらの注文と実験を進める。
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