2023 Fiscal Year Annual Research Report
刺胞動物の放射対称性と左右対称性を調節する原理の構成的理解:実験と数理モデル
Project/Area Number |
21K19297
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
藤本 仰一 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 教授 (60334306)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Sarper Safiye 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 学振特別研究員PD (90899915)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 進化発生 / 対称性 / 刺胞動物 / 形態形成 / 器官配置 |
Outline of Annual Research Achievements |
体の対称性は器官の配置に表れる最も基本的な特徴であるが、対称性が多様化するメカニズムはまだ完全には解明されていない。私たちは刺胞動物であるタテジマイソギンチャク(イソギンチャク目)の形態に注目し、左右対称個体と放射相称個体が同じ種内で共存していることを発見した(Sarper 他, 2021)。さらに、タテジマイソギンチャクの体の再生過程を実験室で安定的に再現する実験方法を確立した。タテジマイソギンチャクの体の一部を切り取り、シャーレで培養することで再生過程を実現できた。複数の個体において胃袋や口の器官配置の時空間パターンを顕微鏡で解析可能となった。 並行して、放射相称性を示すヒドロ虫綱(刺胞動物門でイソギンチャク目の後に分岐)のタマウミヒドラの近縁種(Coryne uchidai)の器官配置(触手配置)を定量的に解析した。その結果、C. uchidaiのポリプでは、複数の触手が口を囲む円周上の等角度に位置し、さらにそれが複数回繰り返されてリング状(列)のパターンを作ることを見出した。さらに、連続するリングの間で触手の数は共通であり、個体内で一貫して同じ数の対象軸を持つ放射相称性がみられることを発見した。最も多かったタイプは、四つの触手が等角度でリングを作り、各触手の長軸方向の位置に周期4を示す四放射相称性であった。一方、三放射相称と五放射相称もみられ、種内多型を見出した。さらに、放射相称の多様性は個体のサイズと正に相関し、五放射相称のポリプの直径は四放射相称のポリプよりも、四放射相称のポリプは三放射相称のポリプよりも大きかった(Sarper 他, 2023)。 さらに、栄養依存的な器官形成が放射相称性を一時的に乱しながら、場所特異的な増殖等を介して対称性を回復する現象をミズクラゲのポリプで発見し、その分子機構の一端を明らかにした。
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