2021 Fiscal Year Research-status Report
自由行動下・組織特異的な脳―末梢間神経回路の活動解析法の開発
Project/Area Number |
21K19362
|
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
近藤 邦生 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 助教 (90784950)
|
Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
Keywords | 脳ー末梢組織間神経回路 / 仮性狂犬病ウイルス / 経シナプス性ウイルストレーサー |
Outline of Annual Research Achievements |
脳と末梢組織は、互いに情報を交換して協調的に機能し、内部状態の変化を一定の範囲内に収める「恒常性」を維持している。脳(中枢神経系)は外環境や体内の生理状態を検知し、その情報をもとに末梢組織の機能を制御する、恒常性の司令塔として機能する。したがって、生体の恒常性メカニズムの理解には、脳による各末梢組織の制御メカニズムの理解が必要不可欠である。しかし、昨今の神経科学の技術進歩にも関わらず、その間を結ぶ脳―末梢間の神経回路の解析は、いまだに進んでいない。特に、自由行動下の動物において、脳―末梢間の神経回路がどのように活動するか、ほとんどわかっていない。本研究では、自由行動下の動物において、それぞれの末梢組織を制御する脳―末梢間神経回路の神経活動を特異的に計測できる、新しい技術を開発する。 仮性狂犬病ウイルス(Pseudorabies virus;PRV)は、神経細胞へ感染後にシナプス結合を介して別の細胞に逆行的に(下流から上流の神経細胞へ)感染する。目的の末梢組織の神経細胞にPRVが感染すると、PRVは順次輸送され最終的に脳の神経細胞へ感染する。本年度は「末梢組織から脳まで移動して、脳の感染細胞に影響を与えず目的遺伝子を発現できる」新しいPRVの開発をおこなった。まず、遺伝子Xを欠損したPRVを作出し、このウイルスが細胞に毒性を与えることなく、長期間にわたり様々な遺伝子を発現できることを見出した。薬剤依存的に遺伝子Xの発現が制御される遺伝子組換えPRVを数種類作出した。そしてその中に幾つかのウイルスでは、薬剤依存的に神経回路間の輸送を制御できることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PRVは非常に有用なウイルスベクターであるが、ウイルス感染が毒性を持ち、細胞の生理状態に影響して細胞死を引き起こす。そのため現状では、光遺伝学などの解析手法と併用し、ウイルス感染細胞の神経活動の計測などを行うことができない。しかし、本研究では、このような細胞毒性を持たない新しいウイルスベクターの作出に成功した。また、この成果をもとに、薬剤依存的に神経細胞間の輸送が制御され、細胞毒性が低い、新しいウイルスベクターの作成にも成功した。したがって、本研究は当初の予定通りに進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度作成したウイルスベクターをもとに、脳から末梢組織までの神経細胞に、安定的に目的遺伝子を発現できる手法を確立する。そして、この手法を用いて、エネルギー代謝を制御する骨格筋や褐色脂肪などの組織へ投射する神経細胞にカルシウムセンターなど、神経活動を計測できる遺伝子を発現させる。このような処置を施したマウスの、ウイルス感染細胞が存在する脳領域に光ファイバーを留置し、ファイバーフォトメトリー法などで感染細胞のカルシウム濃度変化などを計測する。この方法により、自由行動下でのマウスにおいて、脳と特定の末梢組織を結ぶ神経回路の活動状態の変化を計測する。
|
-
-
-
[Journal Article] Basigin deficiency prevents anaplerosis and ameliorates insulin resistance and hepatosteatosis2021
Author(s)
Ryuge A, Kosugi T, Maeda K, Banno R, Gou Y, Zaitsu K, Ito T, Sato Y, Hirayama A, Tsubota S, Honda T, Nakajima K, Ozaki T, Kondoh K, Takahashi K, Kato N, Ishimoto T, Soga T, Nakagawa T, Koike T, Arima H, Yuzawa Y, Minokoshi Y, Maruyama S, Kadomatsu K
-
Journal Title
JCI Insight
Volume: 6
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-