2021 Fiscal Year Research-status Report
加齢グラフト内誘導性気管支関連リンパ節の形成過程と大動物移植肺拒絶への関与の解明
Project/Area Number |
21K19536
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐原 寿史 鹿児島大学, 総合科学域総合研究学系, 准教授 (90452333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関島 光裕 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 特任助教 (20568589)
岩永 健裕 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 特任助教 (40518916)
有吉 勇一 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 学外協力研究者 (10643520)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 移植・再生医療 / 誘導性気管支関連リンパ節 / 虚血再灌流障害 / 肺移植 / ミニブタ / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
1次リンパ組織(胸腺、骨髄)、2次リンパ組織(リンパ節、扁桃腺、パイエル板等)に対し、肺組織内で細菌やウィルス感染、各種自己免疫疾患などによって、比較的小規模な胚中心様形態をとる誘導性気管支関連リンパ組織(inducible bronchus-associated lymphoid tissue: iBALT)と呼ばれる3次リンパ組織が誘導されることが明らかになり、iBALTの病態形成への関与が注目される。iBALTの誘導は、加齢による周囲の環境変化の結果、肺内線維芽細胞の形質転換が引き起こされ、T細胞活性化とB細胞のプラズマ細胞への分化を誘導するニッチを提供することで獲得免疫の起点因子の形成に至ると考えられる。本研究では、主要組織適合性抗原(MHC)が確立したミニブタを用いて、年齢とiBALT誘導との因果関係および 移植後の肺障害(虚血再灌流障害)や拒絶との関連を明らかにする。 令和3年度は、加齢ドナー肺でのiBALT誘導は移植肺障害・拒絶促進因子になるという仮定のもと、肺および個体の年齢によるiBALT誘導性と肺障害促進への影響の評価に焦点をあてた実験として、まずアロ免疫応答(獲得免疫系)の関与の少ない虚血再灌流障害IRIモデルを用いた検討を実施した(目的1)。ミニブタの加齢性変化が3歳以降で始まることから、3歳以上(40-45 kg)の個体を用いて、左肺動静脈・主気管支遮断により虚血再灌流障害を誘導し、術式等を一致させた既報の10ヶ月未満の個体を用いた動物との間で結果の比較検討を行った。この結果、経時的な胸部X線、血液ガス分析による評価では両群と間で大きな相違は認めなかった。現在、肺生検によるH&E、線維化病変、アポトーシスあるいは組織学的なiBALTの評価を行っており、虚血再灌流障害モデルで加齢因子単独がiBALT形成の誘導をもたらすのかについて結論を得る方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は実験計画書に従い、獲得免疫系の関与の少ない虚血再灌流障害を用いた検討を行い、臓器(および個体)の加齢因子が加わっても、虚血再灌流障害の増悪は認めないという結果を得た。また現在生検検体を用いて、組織学的にiBLATが誘導されているのかという点を詳細に評価している。さらに、これらの結果を基に、計画書に従い令和4年度の獲得免疫系を加味した加齢によるiBALT誘導性を評価する研究も計画していることから、おおむね順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の実験結果は、病理学的な詳細な検討中ではあるものの、アロ免疫応答のないIRIモデルでは、加齢因子単独ではiBALT誘導がもたされない可能性を示唆している。令和4年度は、実験計画書に従って、レシピエントのアロ応答によるiBALT誘導への影響と拒絶反応の関係を評価する。クラウン系ミニブタを用い、MHCが完全不適合であるレシピエントに左全葉もしくは下葉移植を、臨床に即したタクロリムス+MMF+ステロイドを投与下に行う。まず加齢ドナーから若年レシピエントへの移植を行うことによって、ドナーの加齢因子がiBALT誘導と組織障害/修復過程に及ぼすか、という点について評価を行う。あわせて、令和3年度の検討に従い肺や病理評価を行い、また抗ドナー反応についてCFSE-MLR、PKH26-CML、フローサイトメトリーによる抗ドナー抗体産生を評価する。これらの結果に応じ、若年ドナーから加齢レシピエントへの移植など、ドナーおよびレシピエントの加齢因子を評価するための種々の実験を検討する。
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Causes of Carryover |
病理学的なiBALT誘導性の評価については現時点で検討中であり次年度にかけての継続課題としているため、特に物品費に関して令和3年度の使用額を減ずることになった。しかし、この費用に関しては、すでに次年度早期に使用完了となる予定である。
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