2021 Fiscal Year Research-status Report
Building a database that enables age estimation and fracture diagnosis using blood
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21K19678
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
鎌倉 尚史 神奈川歯科大学, 歯学部, 特任講師 (60527224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 貴美子 神奈川歯科大学, 歯学部, 助教 (10534034)
山本 伊佐夫 神奈川歯科大学, 歯学部, 講師 (30277917)
大平 寛 神奈川歯科大学, 歯学部, 准教授 (60386828)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | FGF23 / 年齢推定 / 骨評価 / 骨折診断 / 骨粗鬆症 / 児童虐待 / 高齢者医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
生後1、2、4、12、24週の正常マウスから採血、血清を分離してELISA法で血液中のFGF23濃度を測定した。このFGF23濃度については2種類測定している。1つは活性型FGF23の濃度で、もう一つは分解産物と活性型の総和である。活性型FGF23は腎臓などに作用するために血液中に存在しているもので、分解産物は骨を作るなどに利用された後、全身へ作用しないように分解されたものが血液中に存在していると考えられている。この2種類を測定する理由は、骨を作るのに利用された分解産物の量を知るためには、技術的問題からこの2つを測定せざるを得ないことと、活性型の濃度はリン代謝に影響するため疾患や食事による影響を受けるためである。 これら2種類の濃度を測定し、総量の濃度/活性型の濃度の比で評価したところ、マウスの成長発育のうち骨の成長のスパートに相関する傾向を確認した。具体的には、他の研究者の論文でFGF23が骨の成長発育に重要な役割を果たすとされる2週齢までは高濃度に検出されるがその後は減少し、骨の成長のスパートが過ぎ成熟した時期に相当する12週齢になると濃度が最も低くなっていた。t-検定の結果、2週齢と12週齢の間でこの濃度比に有意差を認めた(p<0.05)。活性型の濃度のみでは有意差はなく、また実験動物であり疾患もないため、この濃度比は骨の成長を反映したものと考えられる。 また、脛骨および大腿骨を採取しFGF23をターゲットとして免疫染色を行なった結果、4週齢を過ぎると、発現細胞が減少していく傾向が認められた。しかし、単純に数が減少するというだけではなく、週齢によって発現する細胞に特徴が認められた。大きく分けると、骨芽細胞に発現するものと軟骨細胞に発現するものがあり、こういった違いと週齢がどのような関連があるのか、さらに研究が必要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画していた動物実験については、予定通り実施した。生後1週、2週、4週、12週、24週齢の正常マウスから麻酔下にて採血、ELISA法にて血中FGF23濃度を測定した。 また大腿骨および脛骨を採取、免疫染色を行い発現の傾向を確認している。 その結果、血中FGF23濃度についてはマウスの成長発育のうち骨の成長のスパートに相関する傾向を確認した。さらに統計分析を行い、論文にまとめる予定である。免疫染色では、単純な発現細胞の数の過多だけでなく、発現する細胞の種類にも週齢によって傾向がある可能性が出てきており、今後さらに解析するために免疫染色以外の染色を追加するほか、培養細胞株を用いた研究の追加を検討している。 人を対象とした血中FGF23濃度の測定計画について、学内の倫理審査委員会に申請、承認を得た。審査に時間がかかり、本学学生の健康診断での採血には間に合わなかったが、令和4年度の本学教職員の健康診断には間に合った。新型コロナウイルス感染症流行により、当初予定していた外部機関の協力での血液収集が困難となったため、若年者の血液収集が遅れているが、現在別の複数の医療機関と交渉を開始している。 人を対象とした研究は当初より遅れていると言えるが、あくまで本学学生などの未成年を中心とした年齢層に限った話であり、動物実験が順調に推移していることと併せて考えると概ね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度より、まずは6月に実施される本学教職員の健康診断において、成人の血液の採集を行う予定で、全教職員への説明資料の配布をすでに済ませている。以降、学外の医療機関に協力を求め未成年者の血液およびアンケートの採集を計画している。現在、乳幼児の外科処置をおこなっている医療機関、整形外科、障がい者医療機関を中心に複数の医療機関に協力を打診、交渉を進めており、まとまり次第血液を収集し、採集した血液は、随時ELISAにより血中FGF23濃度を測定し、アンケートと共にデータベースを構築する予定である。 当初の予定と比較して、動物実験が順調に進行したため、追加で培養細胞株を用いた研究を追加し、FGF23と骨形成の関連について、細胞における遺伝子発現と各因子の相互作用、条件について検証を行う計画を立てている。 遺体からの血液採取については、新型コロナウイルス感染症による影響により、安全が確認された血液を当初の予定通り収集することが困難となった。そのため本年度は、生体から採取した血液を一定期間常温で放置し、血中FGF23濃度を測定し死後変化を想定した分解速度を調べる実験の遂行のみとする予定である。
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Causes of Carryover |
人の血液を対象とした研究が本年度はスタートできなかったため、それにかかる費用として想定していたELISAキットの購入を来年度に先送りしたことが最も大きい要因となっている。動物実験についても順調に推移したため、費用が想定よりも安くなったことも一因である。また、設備費として予定していたディープフリーザーが想定よりも安く購入でき、10万円以上節約できたことも影響している。 次年度使用額については、倫理審査承認の遅れによって令和4年度に実施予定を変更した若年者の血液検査をするためのELISAキットの購入に充てるほか、想定より安く済んだ部分については、新たに計画している細胞培養に充てる計画を立てている。
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