2021 Fiscal Year Research-status Report
電荷による細胞応答制御法の創出ーチャージハイドロゲルでウイルス感染症・がんを治す
Project/Area Number |
21K19878
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 伸哉 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70261287)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / ウイルス感染 / がん幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
(研究の骨格)医学の領域で感染症・がんは2大疾患であり、これらを制御することは喫緊の課題である。我々は最近、バイオマテリアルの1つであるハイドロゲルがヒト細胞に急速なゲノム変化を誘導することを見出した(Nat. Biomed. Eng, 5, 914-925, 2021)。本研究はこの技術を格段に発展させるもので、ハイドロゲルを用いて細胞周囲のチャージ(荷電状態)を変化させることで細胞のゲノム状態を制御し、1)ウイルスへの感染を防御し、また、2)がん幹細胞を誘導することで、がんの早期診断法およびがん幹細胞特異的治療薬を開発する。 (今年度の実績)(1)チャージゲルによるウイルス増殖制御法の創出:陰性荷電を有するPAMPSゲルとPNaSSゲル、さらに正と負の荷電の両方を有する両性荷電ゲルPCDME上でウイルス感受性細胞VEROを培養し、COVID-19感染後にウイルス増殖を検討した。ウイルス核酸レベルで評価した場合、PAMPSとPNaSS上でウイルス増殖が亢進する一方、PCDMEゲル上では抑制される傾向が認められた。 (2)チャージゲルによるがん幹細胞誘導:陰性荷電を有するAMPSと陽性荷電を有するAPTMAモノマーを様々な割合で配合したチャージハイドロゲルを作製し、患者由来膵癌初代細胞を培養した所、陽性にシフトしたチャージゲルに癌細胞は接着し、癌幹細胞マーカーの発現が亢進することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究により、ハイドロゲルの荷電状態を変えることにより、ウイルス増殖やがん細胞の接着を制御することが可能となった。 (1)チャージゲルによるウイルス増殖制御法の創出:ウイルスの増殖には細胞内環境が必要である。COVID-19が感染する肺胞上皮細胞HPAEpicを培養するのに最適なチャージ条件を探索した所、陽性にシフトしたチャージゲルで細胞の接着が良く培養可能であることが判明した。ウイルス感染の母地となる宿主細胞が接着・生存するチャージと、ウイルスが増殖するために最適なチャージは異なる可能性があり興味深い。尚、COVID-19の病態は、研究代表者がcorresponding authorの一人として実施した他の研究プロジェクトによって詳細に解明されており(Nature, 602, 300-306, 2021; Nature 603, 700-705, 2021)、本研究を遂行する上でウイルス及び宿主側反応の十分な情報が得られている。 (2)がん細胞の誘導においては、荷電状態に加えて、品質面で鍵となるゼータ電位、弾性率、膨潤度などの物理因子も、癌細胞の接着および癌幹細胞の誘導に重要であること、それらは癌腫によって最適条件が異なることが明らかとなった。計画通り、各がん組織でのがん幹細胞ニッシェの環境の物理因子が判明されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の研究成果をもとに、生体内組織を模倣した3D構造の構築のため多孔化チャージゲルを創出する。ここに、①ウイルス感受性細胞を培養し、ウイルス増殖を抑制するための最適条件を探索する。また、②3D環境下でがん幹細胞を最も効率よく誘導可能とする条件を探索し、北大薬剤ライブラリーを用いて癌幹細胞治療薬のシーズの候補を得る。将来的に、量子化学反応を計算科学でデザインして創出された高機能ゲルを用いて、新しいがんの診断、治療法を創出することも出口戦略に見据えている。本研究は、これまでに類を見ない画期的なバイオマテリアルの創出に挑戦するものであり、最終的には、再生医療、未来医療を学術的に支える新学問領域「マテリアルゲノミクス」の確立を目指す。
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[Journal Article] Genome-wide CRISPR screen identifies CDK6 as a therapeutic target in adult T-cell leukemia/lymphoma2022
Author(s)
Ishio T, Kumar S, Shimono J, Daenthanasanmak A, Dubois S, Lin Y, Bryant B, Petrus MN, Bachy E, Huang DW, Yang Y, Green PL, Hasegawa H, Maeda M, Goto H, Endo T, Yokota T, Hatanaka KC, Hatanaka Y, Tanaka S, Matsuno Y, Yang Y, Hashino S, Teshima T, Waldmann TA, Staudt LM, Nakagawa M.
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Journal Title
Blood
Volume: 139
Pages: 1541~1556
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Comprehensive molecular profiling of pulmonary pleomorphic carcinoma2021
Author(s)
Nagano Masaaki、Kohsaka Shinji、Hayashi Takuo、Ueno Toshihide、Kojima Shinya、Shinozaki-Ushiku Aya、Morita Shigeki、Tsuda Masumi、Tanaka Shinya、Shinohara Toshiya、Omori Yuko、Sugaya Fumiko、Kato Hiroaki、Narita Yoshiaki、Nakajima Jun、Suzuki Kenji、Takamochi Kazuya、Mano Hiroyuki
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Journal Title
npj Precision Oncology
Volume: 5
Pages: 57
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Cardiac-specific loss of mitoNEET expression is linked with age-related heart failure2021
Author(s)
Furihata T, Takada S, Kakutani N, Maekawa S, Tsuda M, Matsumoto J, Mizushima W, Fukushima A, Yokota T, Enzan N, Matsushima S, Handa H, Fumoto Y, Nio-Kobayashi J, Iwanaga T, Tanaka S, Tsutsui H, Sabe H, Kinugawa S.
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Journal Title
Communications Biology
Volume: 4
Pages: 138
DOI
Peer Reviewed
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