2022 Fiscal Year Annual Research Report
A Comparative Study of the Newly Availabled Sanskrit Potala Palace Abhidharmakozakarika; Manuscript and Chinese Translations and Other Books
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21K19969
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
田中 裕成 佛教大学, 総合研究所, 特別研究員 (50912408)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | アビダルマ / 異読 / 倶舎頌 / 世親 / 真諦 / 『倶舎論』 / 『順正理論』 / 『ポタラ宮倶舎頌』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では『倶舎頌』諸本の異読には思想的価値が存在するとの着想のもと、新出梵文ポタラ宮倶舎頌写本の校訂作業と『倶舎頌』諸本の対照作業を行っている。 最終年度の研究では、『ポタラ宮倶舎頌』の新出偈の一つであるAKK V.42-2の研究を行った。AKK V.42-1(本来のAKK, V.42)は「纏を八つとする立場(八纏説)」から九結の中に嫉と慳のみ数えられる二つの理由を説明する。一方で、AKK.V.42-2(追加された偈、及び真諦訳)はヴァイバーシカによる「纏を十とする立場(十纏説)」の立場から三つの理由を説明する。一方で、玄奘訳『倶舎論』と『順正理論』は四つの理由を提示する。これらの対比から、AKBhに関係するテキストの情報の新古が明らかとなり、AKBhの内容は常に最新の教義にアップデートされていることも明らかとなった。この点については、「新出倶舎頌写本に見いだされる異読と新偈について」として、日本印度学仏教学会にて発表を行い、その内容をまとめ、同雑誌に投稿を行った(田中[2023b])。 本研究は著者性のある哲学書であっても第三者の思想的立場によって改変が行われていた可能性があると考え、『倶舎頌』の新発見写本や漢訳や蔵訳等との比較研究を行った。本研究によって明らかとなった点は多々あるが、その中でも特に重要な成果は次の二点である。先ず、田中[2023a]では、「伝説(kila)」の語を巡ってそれぞれのテキストが異なる立場を取っていることを明らかにした。つぎに、田中[2023b]ではそれぞれのテキストが保持する情報の新古について明らかにした。これらの研究成果から、著者性のある哲学書であっても、後の時代に第三者の思想的立場によって改変が行われていたことが明らかとなった。そして、真諦訳『倶舎論』は偈頌と注釈ともに特異な情報を多く含んでおり、真諦訳『倶舎論』は様々な角度からさらなる研究が必要なことが明らかとなった。
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