2021 Fiscal Year Annual Research Report
18・19世紀における朝廷と古義堂との交流に関する基礎的研究
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21K20058
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
金 炯辰 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, アソシエイトフェロー (10911878)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 古義堂 / 公家 / 伊藤東所 / 伊藤東峯 / 伊藤東涯 / 鷹司政通 / 朝廷 / 天皇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「18・19世紀における朝廷と古義堂との交流に関する基礎的研究」では、江戸時代(以下「近世」)の中後期にあたる18・19世紀の朝廷・公家社会と、伊藤仁斎を受け継いだ京都堀川の町儒者・古義堂伊藤家との交流関係を検討した。 1840年末に没した上皇兼仁に、その翌年「光格天皇」の号が贈られた。平安後期から約900年間途絶えていた天皇号・漢風諡号の再興である。当時、古義堂の5代目当主・伊藤東峯が、関白鷹司政通の内密な求めに応じてアドバイスを提供していた。本研究では、この天皇号・漢風諡号再興の背景を探るという目標を軸として、摂家鷹司家と古義堂との繋がりに関わる史料を集中的に調査した。研究課題の遂行期間が短いため、課題の期間中においては、関連史料の所在を把握し、調査・確保する作業に重点をおいた。 近世の古義堂で形成された史料は昭和戦前期に天理大学へ寄贈され、現在も天理大学附属天理図書館所蔵の古義堂文庫史料として所蔵・公開されている。本研究課題の遂行でも、この古義堂文庫史料の調査・確保を最優先とした。研究の対象時期である18~19世紀は、古義堂では2代目当主・伊藤東涯(仁斎の息子)、3代目・東所、4代目・東里、5代目・東峯の時代にあたる。本研究では、彼ら歴代当主による日記や他の記録類を確保する作業が中心となった。また宮内庁書陵部・東京大学史料編纂所に所蔵された公家日記を調査・確保した。そのなかでも、天皇号・漢風諡号が再興される頃に関白鷹司政通と密接な関係にあった武家伝奏・徳大寺実堅、そして光格・仁孝天皇の諡号選定に関わった五条為定・勘解由小路資善の関係史料を中心的に調べた。
本研究課題の遂行により、近世の古義堂と公家社会との関係が公家たちの思考の変容、そして幕末維新に向けた朝廷運営の変容にどのような影響をもたらしたかについて考察を深めるための基礎的作業が進んだといえる。
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