2021 Fiscal Year Research-status Report
啓蒙期フランスにおける教育可能性論と自然誌の交差に関する思想史的研究
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21K20243
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
杉山 大幹 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (60906692)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 教育思想 / 自然誌 / フランス / ビュフォン / ルソー / 子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、啓蒙期フランスにおける教育可能性をめぐる思想の形成過程を、それに対する同時代の自然誌書の影響に着目して明らかにしようとするものである。この目的のため、申請者は、18世紀を代表する自然誌学者であるビュフォンと、ルソーやコンディヤックに代表される同時代の教育思想家たちとの、著作を介した知的交流に焦点を当てて検討を進めている。 初年度にあたる2021年度には、まず、ビュフォン最初期の思索において教育可能性がどのように論じられていたかを明らかにするため、その主著『一般と個別の自然誌』第2巻に収録された「人間の本性について」を検討した。成果は論文にまとめ、学内紀要 (査読有) に投稿した。 当初の計画では、上記の研究の次に、1750年代後半のビュフォンのテクストを、ルソーの教育思想との関わりの観点から検討する予定であった。しかし、上述の検討の過程で、ビュフォンの教育可能性論が、それよりも早い時期に、子育てと教育に関する指南として具体化されていることが示唆された。そのため研究計画を若干変更し、先に『自然誌』第2-3巻に収録された人生の諸時期をめぐる諸章の検討を行うことにした。その成果として、ビュフォンの子ども論の特質を当時の医師たちによる子ども論との比較のもと明らかにする趣旨の論文を執筆し、学外の査読誌に投稿した (現在査読中)。また、同時期のテクストを題材として、当時の子育て慣習の一種である「巻き産衣」に対するビュフォンの批判に焦点を当て、ルソーの子ども論との関連性を検討する論文を作成し、学外の査読誌に投稿した (現在査読中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究によって、ビュフォンの教育可能性論の一端を明らかにし、さらにルソー『エミール』第1編に対する影響を検討、その成果を論文にまとめることができた。まだ論文化できていない部分に関しても研究自体は進めることができており、研究の進捗は全体的に順調であると言える。 2021年度に予定していた国内のいくつかの大学図書館への資料調査は、新型コロナウィルス感染症の流行の影響で実施できなかった。しかしながら、書籍の購入による資料収集とその整理は想定していた以上に好調であり、資料調査ができなかった分をおおむね補えていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2021年度の研究成果の論文化を引き続き図っていくと同時に、教育可能性をめぐるビュフォンの思索の同時代人への影響を、さらに広範囲にわたって検討することを予定している。具体的には、すでに検討を開始しているルソーに加えて、コンディヤックやエルヴェシウスの思想との関連性についての検討を行うつもりである。 フランスでの資料調査も計画しているものの、新型コロナウィルス感染症の流行はいまだ収まっておらず、予断を許さない状況にある。現地の感染者数の推移、また日本とフランス両国において求められる自己隔離期間等を勘案して、海外での調査実施の適否や、実施する際の形態を決定したい。
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Causes of Carryover |
2021年度には、名古屋大学附属図書館をはじめとするいくつかの国内図書館での文献調査を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大のため、中止を余儀なくされた。このため、次年度使用額欄に記載された金額が発生した。
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Research Products
(1 results)