2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K20332
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
須田 颯 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 研究員 (80912386)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 箱玉系 / 一般化流体力学極限 / 逆散乱法 / 離散ソリトン系 |
Outline of Annual Research Achievements |
箱玉系は{0,1}^{N} 上のセル・オートマトンの一種であり, 離散ソリトン系であることが知られている. 箱玉系のダイナミクスは0を空箱, 1を玉に見立て, 01の無限列の左端から空の「キャリア(荷車)」が走り, 玉があれば拾い, 玉を保持している状態で空箱を通過した際にはそこに下ろす, といったルールで定義することができる. 箱玉系はいくつかの手法でそのダイナミクスを「線形化」できることが知られている. 前年度の研究では, 出自の異なる線形化手法間の関係を明らかにし, その中で新たな線形化手法である「席番号配置」を構築した. 今年度は, 席番号配置を任意の01列に対して定義できることを示し, それを用いて次のような解析(1), (2)を行った. (1)キャリアの容量が有限である箱玉系の巨視的時間発展法則を導出した. これまでは [Croydon-Sasada-21] によってキャリア容量が無限でありソリトンの高さが有限であるような配置上の箱玉系においてのみ巨視的挙動が厳密に導出されていたが, 本研究ではキャリア容量を一般化しただけでなくソリトンの高さに対する仮定をも外した. さらに,席番号配置を用いることによって {0,1}^{Z} 上で定義された「両無限」箱玉系に対する一般化流体力学極限の導出も可能であると期待されている. これを証明し, 先に述べた結果と合わせて発表したい. (2)さらに, 箱玉系の初期配置が標準的な定常分布に従う場合においては, 席番号配置の分布が計算可能であることを発見した. これにより, 定常状態における席番号配置のカレントの長時間挙動を得ることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に目標として掲げていた席番号配置を用いた一般化流体力学極限, またより広いクラスの01列に対する席番号配置の構成に成功した. さらに, 定常状態における席番号配置の分布も得られている. よって研究は順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
箱玉系に対して, 両無限箱玉系に関する一般化流体力学極限の導出を目指す. また, 箱玉系の一般化である「多色箱玉系」に対して席番号配置の概念を拡張し, その解析を行う. また, 今年度は新型コロナウイルスの蔓延により延期していた課題である"一次元非線形系における熱の異常輸送現象"にも取り組む. 特に系に熱源がある場合, それが巨視的時間発展法則に与える影響を, 確率調和振動子鎖の解析を通して研究する予定である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由について, これは新型コロナウイルスの蔓延により, 当初予定していた海外への研究滞在が行えなかったためである. 今年度の使用計画について, 本来は前年度までに行う予定であった Stefano Olla氏 (Universite Paris-Dauphine) の下への滞在, また関連分野の海外研究集会に現地参加するための費用として用いる予定である.
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Research Products
(4 results)