2021 Fiscal Year Research-status Report
光電式容積脈波記録法を用いた環境騒音による睡眠影響の評価ツール開発
Project/Area Number |
21K20467
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
森長 誠 神奈川大学, 工学部, 助教 (70536846)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 環境騒音 / 睡眠影響 / ウェアラブル / PPG / 睡眠ステージ / HRV |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年にWHO欧州事務局が環境騒音ガイドラインを公表して以来,騒音に係る環境基準の意義とそのあり方を見直すべきとの議論は欧州を超え,国際的に機運が高まっている.しかしながら,その見直しに必要不可欠である「曝露-反応関係」についての客観的なデータは不足している.本申請研究では,環境騒音による睡眠影響に関しての曝露-反応関係の構築に必要とされながらも,コストや労力の観点で困難とされてきた,大規模かつ客観的に睡眠データを収集できる手法の確立を目的としている.具体的には,近年,スマートウォッチ等のウェアラブルデバイスでの普及が進んでいる光電式容積脈波記録(Photoplethysmography: 以降,PPGデバイスとよぶ)やポータブル心電計を用いた環境騒音による睡眠影響の評価手法を検討する.本申請研究は以下の2項目に取り組むものであり,2021年度は1)を実施した. 1) PPGデバイス等を応用した睡眠影響評価の可能性の検討(実験室実験+フィールド実験) 2) PPGデバイス等を用いたフィールド調査の実践(フィールドでのケーススタディ) 本研究は沖縄県にある睡眠治療のクリニックの協力を得て進めており,当クリニックにいびき治療で通院する14名の患者を対象として実験をおこなった.実験期間は2021年10月から11月である.睡眠検査のゴールドスタンダードである睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行っている実験参加者の体に,PPG及びポータブル心電計を同時に装着して一晩寝てもらい,それぞれのデバイスで推定した睡眠ステージと,PSGの結果とを比較した.その結果,PPGとPSGの結果は中程度の一致を示した(重み付きカッパ係数で約0.5).また,ポータブル心電計で得られた心拍変動の解析値で行った機械学習での推計値はPSGと非常によく一致していることを示した(重み付きカッパ係数で約0.8).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に示した工程通りにほぼ進行しており,「研究実績の概要」で示した1)を2021年度に完了することができた.また,1)の調査において,ウェアラブルデバイスがPSGと概ね一致している傾向を示すことができたため,それらを用いた2)のフィールド調査を順調に実施できる見込みである.
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Strategy for Future Research Activity |
我が国での数少ない研究事例として,PPGデバイスと質問紙を併用した飛行場周辺でのフィールド調査を行い(40名程度),航空機騒音の曝露と睡眠の質,覚醒,自己申告の睡眠妨害,不快感との定量的関係を示す.また,非騒音地域での結果との比較により,航空機騒音の曝露による睡眠影響のリスク評価を行う.手法としては,多重ロジスティック回帰分析により交絡要因を調整した曝露地域と非騒音曝露地域での比較を行い,航空機の騒音レベルの増加に対するオッズ比の有意な増加がみられるか,明らかにする.アンケートで副次的に得られる不快感についてのデータは,日本騒音制御工学会が公開しているデータと合わせたメタ分析を行い,我が国を代表する航空機騒音の曝露-反応関係としての提案を行う.
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Causes of Carryover |
当初,効率よく実験結果を得るために,8名程度の参加者に対して同時に睡眠実験を行うことを想定していたが,実験計画や準備が順調に進行したため,時間に余裕が生じた.このため,同時に2名程度での実施でも十分に予定通りに実験が完了する見込みとなり,2021年度の機材費をカットして,2022年度に実施するフィールド調査でより多くの参加者を募るための謝金に充てたほうが研究全体としての質が向上すると判断した. 2022年度は,フィールド調査で使用する機材の購入費,フィールド調査参加への謝金,実験の成果を公表するための学会参加費や旅費,論文掲載費に助成金を使用する見込みである.
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