2022 Fiscal Year Annual Research Report
抗がん剤スクリーニングに向けた成長因子の徐放技術を活用した3次元組織体の構築
Project/Area Number |
21K20517
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新居 輝樹 九州大学, 工学研究院, 助教 (90908419)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 3次元組織体 / ゼラチン / 薬物徐放 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、体内の複雑ながん環境を模倣した3次元組織体を構築することである。3次元組織体の構築で最も重要となるのが、組織体の内部まで酸素や栄養分が不足することで細胞死が生じてしまうことにある。そこでまずは酸素や栄養分を十分に供給できるバイオマテリアルであるゼラチンハイドロゲル粒子の作製を試みていた。内部に組み込むゼラチンハイドロゲル粒子の分解性と3次元組織体の生存に相関関係があることが分かってきた。今年度は引き続き、3次元組織体の構築に向けたバイオマテリアルの最適化を主に行った。特に、ゼラチンハイドロゲル粒子に含浸させる栄養分(薬物)の放出スピードについて検討を行ってきた。 今年度は、3次元組織体にとって栄養分となる薬物(タンパク質や低分子化合物など)を徐放できるゼラチンハイドロゲル粒子の設計と最適化を行った。親水性のタンパク質をゼラチンハイドロゲル粒子に含浸させることで粒子の分解に依存して薬物が放出されることが分かった。また、そのタンパク質を含むゼラチンハイドロゲル粒子に対してさらに疎水性薬物を含浸させたところ、各々の薬物の放出スピードが遅くなることを明らかにした。特に、疎水性薬物の含浸濃度を高めれば高めるほど、その放出スピードは遅くなった。これは、薬物徐放スピードを遅くするためにこれまで利用されてきたグルタルアルデヒド(細胞毒性あり)を高濃度添加する必要がないという新しい知見を得たことになる。3次元組織体に供給される薬物スピードが変化したため、長期にわたる栄養分の供給が可能となり、生存率を大きく向上させることが分かった。これらの作製された3次元組織体の生物学的機能(タンパク質発現や薬物感受性など)について、現在評価するべく、準備を進めているところである。
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