2021 Fiscal Year Research-status Report
フロー精密合成システムを駆使した電子移動型強誘電体材料の創成
Project/Area Number |
21K20544
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
秋吉 亮平 関西学院大学, 理学部, 助教 (00907537)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 機能性金属錯体 / フロー合成 / マテリアルズインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、金属錯体が示す電子状態の変化に立脚した双極子モーメントを世界に先駆けて実現し、その分子ユニットをフロー精密合成システムを駆使して配向させることで、従来までの構造の変化に基づく強誘電体と一線を画した“電子状態の変化に基づく新たな強誘電体材料の創成”を目指す。更に、フロー精密合成が得意とするハイスループット合成と機械学習を始めとするマテリアルズインフォマティクスを統合することで、合理的且つ効率的に研究を推進し、分子性強誘電体の開発に向けた新しい設計指針を打ち立てる。 2021年度は、数ある金属錯体の中でも低スピンと高スピン間のスピン状態変換を示すスピンクロスオーバー(SCO)錯体の合成に着手した。具体的には、長鎖アルキル基を導入した鉄二価錯体をフロー合成システムを駆使して合成し、従来までのフラスコを用いたバルク合成で得られた錯体分子と構造および磁気特性の比較を行った。フロー合成システムの流速を変化させることで、SCO錯体の集積構造が変化することが明らかになった。また、スピン状態の評価を行ったところ、構造の違いを反映した磁気特性の変化が確認され、フロー合成システムを活用することでSCO錯体の磁気特性の制御に成功した。本研究結果は、機能性金属錯体の集積構造および機能制御の実現に向けた新しい戦略を提唱する。一連の研究成果は日本化学会春季年会において口頭発表を行い、現在論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定通り、フロー合成システムを活用して機能性金属錯体の合成および基礎物性評価を行った。研究結果を取りまとめ、日本化学会春季年会において発表した。集積構造やスピン状態、電子状態については詳細に評価したが、電子状態の変化に基づく誘電特性の変化の評価までは至らなかった。これらのことから、やや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、当初の目的である電子状態の変化に立脚した誘電特性の評価を行う。現在、合成に成功したサンプルについて各スピン状態でインピーダンス測定を行うことで、電子状態の変化に起因する誘電特性の評価を行う。さらに、2021年度の成果を踏まえて考察を行い、論文投稿まで展開する。
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Causes of Carryover |
当初、2021年度までに合成実験が完了していた予定であったが、遅れにより計画を変更し2022年度も引き続き合成を行うこととしたため未使用額が生じた。未使用額については、これら合成実験のための試薬や溶媒などの消耗品費に充てる。また、機械学習に使用するPC費用等にも充てる予定である。
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Research Products
(4 results)