2021 Fiscal Year Research-status Report
複雑な細胞環境におけるsiRNA-AGO複合体の分子動態の解明
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21K20630
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 芳明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任研究員 (20907381)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | siRNA / RNAi / AGO2 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ゲノムからはタンパク質をコードするmRNAだけでなく、タンパク質をコードしないノンコーディングRNAが多く転写され、RNAのままで機能を発揮することが明らかになってきた。このようなノンコーディングRNAの中でも、約21塩基程度の小さな二本鎖RNAであるsiRNAは、RNA干渉(RNAi)という塩基配列特異的に遺伝子を切断する抑制機構をもつ。RNAiにおいてsiRNAはArgonaute2(AGO2)タンパク質に取り込まれた後、AGO2の酵素活性により標的mRNAが切断される。特に、siRNAのシード領域(5’末端より2-8番ヌクレオチド)と標的mRNAの対合が必須である。このようなsiRNAの基本的な作用機序については、これまでin vitroな生化学的解析および構造解析により明らかにされてきた。しかしながら、実際の細胞内環境を反映した解析がほとんど行われておらず、いくつかの問題点が挙げられる。例えば、細胞内には多種のRNA結合タンパク質が存在しており、同じ標的RNAに対し、AGO2タンパク質と競合的に相互作用する可能性がある。そこで本研究課題では、多種のRNA結合タンパク質が存在する複雑な細胞環境において、それらのRNA結合タンパク質がsiRNA-AGO2 複合体の切断活性に与える影響を明らかにすることを目的とした。 2021年度は実際の細胞内でのsiRNAの作用機序を理解するため、ルシフェラーゼ遺伝子を用いたRNAi活性の測定実験と情報科学的な解析おこない、siRNAのシード領域が2-5番ヌクレオチドと6-8番ヌクレオチドの2つの機能ドメインに分かれることを見出した。具体的に、2-5番ヌクレオチドはRNAi活性には大きく寄与しないドメインである一方、6-8番ヌクレオチドはRNAi活性の程度を規定するドメインであることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、さらにsiRNAの熱力学的安定性と活性の相関関係について情報科学的な解析を行い、3報の原著論文を報告することができたため(Kobayashi et al., ACS Omega, 2022; Kobayashi et al., Genes, 2022; Kobayashi et al., Research Aspects in Biological Science, 2022)。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、siRNA-AGO2 複合体と競合的に働くRNA結合タンパク質の同定を行い、それらのRNA結合タンパク質がsiRNA-AGO2 複合体の切断活性に与える影響を解析している。
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Causes of Carryover |
2022年度に消耗品に使用する予定である。
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