2023 Fiscal Year Annual Research Report
軟骨肉腫の悪性化機序の解明および新規治療ターゲットの検索
Project/Area Number |
21K20838
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鍋島 央 九州大学, 大学病院, 助教 (90908683)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 軟骨肉腫 / エピゲノム / DNAメチル化 / がん治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
脱分化軟骨肉腫(以下DDCS)は予後不良で外科的切除以外に有効な治療法がない悪性骨腫瘍であり、DDCSの悪性化機構の解明による新規治療法の開発が予後改善のために必要である。今回我々はDNAメチル化がDDCSの悪性化に果たす役割を調べ、エピゲノム異常が新規治療ターゲットとなり得るか検討した。 DNAメチル化によりDDCSと通常型軟骨肉腫(CCS)で発現低下する遺伝子をバイオインフォマティク手法を用いて網羅的に検索しターゲット因子の同定を行い、PRKCZという因子に着目した。DDCSの臨床サンプルでその発現を検証したところ、DNAメチル化によってPRKCZの発現は抑制されており、PRKCZの発現が低い群では予後不良であった。 次に複数の軟骨肉腫細胞株を用いてPRKCZの分子機能を検討した。レンチウイルスを用いてPRKCZを過剰に発現させると軟骨肉腫細胞株の細胞増殖を抑制し、アポトーシスが増加していた。また、XenograftマウスモデルにおいてもPRKCZ過剰発現株の増殖は抑制されてた。PRKCZはプロテインキナーゼの一つであり、プロテインキナーゼは下流のタンパク質をリン酸化させシグナル伝達を行うことで細胞の働きの調整を行っている。リン酸化キナーゼ抗体アレイを用いてリン酸化したタンパク質を網羅的に評価したところ、PRKCZはATMに直接結合して活性化し、CHK2のリン酸化とそれに続くアポトーシスを引き起こしていることがわかった。 また、DNAメチル化酵素阻害剤であるデシタビンの治療効果をin vitroおよびin vivoで評価した。デシタビンはPRKCZのプロモーター領域を脱メチル化することでPRKCZの発現を増加させ、ATM/CHK2経路を活性化し、アポトーシスを誘導して細胞増殖を抑制することが示された。
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