2023 Fiscal Year Annual Research Report
オルガノイドによる食道癌発生予防を目指した新規治療薬開発
Project/Area Number |
21K20842
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
下之薗 将貴 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (40814322)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 食道癌 / オルガノイド / 遺伝子解析 / 薬剤感受性試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭頸部食道の正常上皮オルガノイド、異型上皮オルガノイドおよび扁平上皮癌オルガノイドを樹立し、遺伝子学的な解析を行った。正常上皮オルガノイドはコピー数変異を示さなかったが、癌オルガノイドは多くのコピー数変異を示し、異型上皮オルガノイドはその中間の傾向を示した。食道癌で最も高頻度の遺伝子変異であるp53変異については、正常上皮オルガノイドでは変異率0%、異型上皮オルガノイドでは変異率50%、癌オルガノイドでは変異率100%であった。癌オルガノイドでは多くの遺伝子変異が検出され、遺伝子発現プロファイルでは正常上皮、癌で明らかなクラスターを形成し、異型上皮オルガノイドはその中間に位置した。これらの結果は、オルガノイドが正常上皮、異型上皮、癌の遺伝子的背景を再現することを示したと共に、異型上皮がすでに癌関連の遺伝子変異を抱えているという興味深い事実を示した。 食道癌に対する新規治療薬を開発することを目的とし、本年度は多数の分子標的薬の薬剤感受性試験をハイスループットに実施可能なプラットフォームの樹立を試みた。薬剤試験の前臨床モデルとして有用であるオルガノイド培養技術を用いて9,000種類以上のアメリカ食品医薬品局(FDA)承認薬剤を含む薬剤ライブラリーに対して高スループット薬剤スクリーニングを行った。パイロット研究として3症例の癌オルガノイドでスクリーニングを行い、258種類の薬剤が3症例のうち、2症例以上の癌オルガノイドにおいて80%以上の細胞を死滅させた。95種類の薬剤が3症例の癌オルガノイドに共通して、80%以上の細胞を死滅させた。またさらに3症例に共通して治療効果を認めた薬剤のうち、薬剤の属するクラス分けも明らかとなった。 今後症例の蓄積により新規治療薬の同定、個別化治療への応用が期待される。
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