2021 Fiscal Year Research-status Report
生理学的特徴を抽出する深層学習モデルの構築と脳波による意思抽出への応用
Project/Area Number |
21K21313
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
丸山 裕恒 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任助教 (50913258)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 脳波 / ブレイン・コンピュータ・インタフェース / ALS / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳活動のみからコンピュータや外部装置の制御を行うブレイン・コンピュータ・インタフェース (BCI) は、運動機能が低下する筋萎縮性側索硬化症 (ALS) などの患者にとって、非常に重要なコミュニケーション手段である。本研究は、脳波から細分化された脳領域別に分離した信号(信号源電流)を推定し、それらの中から意思に関する情報として生理学的に妥当な信号を深層学習により抽出する手法の確立により、脳波から意思を抽出するBCIの実用可能性を高めることを目的としている。また、確立した頑強性の高いBCIシステムは、ALS患者とのコミュニケーションへ適用し、有効性の検証を行う。 本年度は、事前に電気による感覚刺激と想起した意思の条件づけを行った対象者が「はい」または「いいえ」を想起するBCI実験のデータを使用し、「はい」と「いいえ」のどちらを想起しているかを脳波の信号源電流から深層学習により識別するBCIシステムを構築した。ほぼ全身の筋肉が動かせない閉じ込め症候群のALS患者の計測済みの実験データを用いてBCIシステムの評価を行った結果、チャンスレベルより統計的に有意に高い識別率が得られた。また、識別に有効な脳領域を識別器から特定することができた。今後は、ALS患者で特定された脳領域について、健常者のBCIシステムで特定された脳領域や、空間分解能の高い機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) で得られた結果との比較を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
閉じ込め症候群のALS患者の計測済みの実験データを用いて、はい・いいえの識別をチャンスレベルより統計的に有意に高い精度で行うことができた。また、脳波からの信号源推定により、識別に寄与する脳領域を特定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した手法の更なる精度向上を目指し、既存研究で精度の向上が報告されているデータ拡張や転移学習などを用いてBCIシステムを改良する。また、データ取得済みの患者とは異なるALS患者への実験を行い、そのデータを用いて開発した手法の精度や有効性、頑強性を検証するとともに、リアルタイムでのBCIシステムの実行を試みる。同時に、ALS患者と健常者において、BCIシステムにおいて有効な脳領域に差があるか、脳波の信号源電流から比較を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、予定していた健常者やALS患者への実験が行えなかったため、未使用額が生じた。既存のデータの解析によりBCIシステムの改良が行える見込みであるため、本年度の未使用額は次年度の実験や成果発表費用に使用する予定である。
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