2012 Fiscal Year Annual Research Report
スーパー制限酵素を用いたゲノム・マニュピュレーション工学の創成
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22000007
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小宮山 真 筑波大学, 学内共同利用施設等, 教授 (50133096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徐 岩 宮崎大学, 医学部, 准教授 (40506763)
伊藤 靖浩 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (50508108)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / 相同組換え / ペプチド核酸 / セリウム / 人工酵素 / バイオテクノロジー / 核酸 / 制限酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
スーパー制限酵素(ARCUT)によるゲノムの操作は、細胞内と細胞外の操作に大別され、それぞれで得られた結果は以下の通りである。 細胞内の系に関しては、複雑な立体構造をしたゲノムではなく、細胞内に導入したプラスミドDNAを用いてARCUTの機能評価を行った。評価には、プラスミドDNA中に組込んだ青色蛍光タンパク質(BFP)遺伝子から緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子への変換効率を指標として用いた。実験は、エレクトロポレーションによりARCUT(ペプチド核酸(PNA)およびCe(IV)/EDTA)やプラスミドDNAを細胞内に導入し、エレクトロポレーションによって生じるプラスミド中の損傷修復のために導入後2日間培養し、最後にGFP遺伝子の一部を含むドナーDNAをリポフェクションにより導入した。その結果、導入するPNA、Ce(IV)/EDTA、ドナーDNAの濃度に依存して変換効率が変化し、細胞内でARCUTが機能していることを示唆する結果が得られた。 細胞外の系に関しては、抽出してきたヒトゲノムDNAに対して、内在遺伝子配列(AAVS1遺伝子、EGFR遺伝子、Ras遺伝子など)を切断部位として持つ数種類のARCUTを調製して選択的な切断を試みた。いずれのARCUTの場合にも目的の位置での切断が確認され、ARCUTの配列設計の自由度が極めて高いことが実証された。また、高濃度のポリエチレングリコールを反応系に添加して得られる分子クラウディング環境下(細胞内の環境を模倣した系)では、通常はPNAのインベージョンがほとんど進行しない高塩濃度条件(ほぼ細胞内と等しい条件)であっても、十分にインベージョンが進行することが明らかになった。この結果は、ARCUTが細胞内で機能していることを支持するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト細胞から抽出したゲノムDNA操作に関する研究は、ほぼ計画通りに順調に進行しており、今後このまま引き続き進めることにより十分な成果が得られるものと思われる。特に、ヒトゲノムDNAレベルで、ARCUTの最大の特徴である配列設計の自由度の高さならびにその容易さ(ワトソン・クリック塩基対のみで目的配列を設定することが可能)を実証することができた。今後は、ARCUTによるDNA切断技術をゲノムDNAやこれに結合するタンパク質群の解析手法へと応用展開を図る予定である。 一方、ARCUTのヒト細胞内での利用に関しては、細胞の持つ複雑さのために、細胞外の応用と比べるとやや進行が遅れているといえる。本年度は、複雑さを回避するために、(1)細胞内に導入したプラスミドを対象とした反応条件のより詳細な検討、(2)細胞内の分子クラウディング環境を模倣した系(細胞外での実験系)を用いた基礎的な情報の収集 などを行った。さらに、細胞内におけるゲノム切断に伴う相同組換えの促進を目指し、PNA、Ce(IV)/EDTA、ドナーDNAの濃度や導入のタイミングなどの種々条件を変えて研究を行った。以上のような検討を行ってきたが、十分な遺伝し組換え効率を得るには至らなかった。しかし、研究の過程で、ARCUTが設計通りにヒト細胞内で機能していることを強く示唆する結果を得ることができた。これは、化学ツールにより相同組換えを促進した世界最初の成功例であり重要な結果といえる。組換え効率に関しては、研究グループの総力を挙げて実用的なレベルまで向上させる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
・細胞外での応用 ゲノムDNAの切断に対して、ARCUTの配列設計の自由度が極めて高いことが実証された。今後の応用のためには、得られた目的の断片のみをいかにして回収してくるかが重要な技術となる。そこで、ARCUTの構成要素であるPNAに着目し、この末端にビオチン修飾を行う。得られた、ビオチン修飾PNAを用いて構築されたARCUTが、従来のARCUTと同様に機能するかを確認した後、ビオチン-アビジン結合を利用した目的DNA断片の精製系を確立する。細胞内では、ゲノムDNAはヒストンなどのタンパク質と複合体を形成しており、このような複合体に対して有効なARCUTを見出すことが組換え効率の向上には必須である。したがって、クロマチン構造を取っているゲノムを直接ARCUTで切断する系についても検討を行う。
・細胞内での応用 (1)ARCUTの構成要素(PNA、Ce(IV)/EDTAおよびドナーDNA)の各濃度、(2)それらの導入法(エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション)、および(3)それらの導入回数とタイミングなどの諸条件をさらに検討する。さらに、相同組換えに効率に対する細胞周期やドナーDNAの長さの影響についても調べる。また、ポリリン酸系配位子を末端に結合したPNAを合成し、我々がDNAの系で既に報告しているCe(IV)錯体/DNAハイブリッド調製法に従って、Ce(IV)/PNAハイブリッドの調製法を確立する。このようなCe(IV)錯体が末端に固定化されたPNAが合成できれば、細胞内においても効率的なDNA切断が実現できるものと期待される。
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Research Products
(16 results)
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[Presentation] PNAへのNLS修飾によるインベージョンの高効率化とDNA切断への応用2012
Author(s)
愛場 雄一郎 , 本田 祐太 , 亀島 渡 , 濱野 悠 , Accetta Alessandro , Sforza Stefano , Marchelli Rosangela , Corradini Roberto , 小宮山 眞
Organizer
第22回バイオ・高分子シンポジウム
Place of Presentation
東京大学先端科学技術研究センター(東京)
Year and Date
2012-06-25
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