2014 Fiscal Year Annual Research Report
スーパー制限酵素を用いたゲノム・マニュピュレーション工学の創成
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22000007
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小宮山 眞 筑波大学, 生命領域学際研究センター, 教授 (50133096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徐 岩 宮崎大学, 医学部, 准教授 (40506763)
須磨岡 淳 東京工科大学, メディア学部, 教授 (10280934)
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Project Period (FY) |
2010-04-21 – 2015-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / 相同組替え / ペプチド / セリウム / 人工酵素 / バイオテクノロジー / 核酸 / 制限酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
スーパー制限酵素は、DNAの塩基配列を認識するペプチド核酸(PNA)とDNAを切断する分子であるCe(IV)/EDTAにより構成されている。研究を進めるなかで、従来使用していたCe(IV)/EDTAのDNA切断活性は必ずしもすべての使用目的に合致するほど高くないことが判明した。これまで、切断効率を高めるために種々錯体について検討したが、Ce(IV)/EDTAよりも高活性な錯体は現在のところ見いだせていない。そこで、天然酵素も評価対象としたところ、ヌクレアーゼS1のような一本鎖特異的なヌクレアーゼを用いるとCe(IV)/EDTAより高い効率でゲノムを目的位置で切断できることが判明した。これを用いて、ヒトゲノムから目的のDNA断片を切り出すことに成功した。用いている酵素は遺伝子工学に一般に使用される酵素であり、本手法はゲノム解析のツールとなり得ることが期待できる。 PNAのインベージョンは、生理条件程度の塩濃度において大きく阻害されることが知られている。このため、細胞内でPNAを二本鎖DNAに対してインベージョンさせることは困難と考えられていた。今回、ポリエチレングリコールなどの添加剤を用いて生体環境を模倣した分子クラウンディング状態でインベージョン反応を試みたところ、高い塩濃度下においても効率的にインベージョンが進行することを見いだした。これは、生体内でのPNAのさらなる応用の可能性を保障する結果である。 さらに、テロメア末端の切り出しに関して、本研究により見いだしたスーパー制限酵素を用いた手法を最適化してプロトコール化を行った。また、ヒトテロメア末端のDNA-RNAハイブリッド型のグアニン四重鎖構造の役割を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スーパー制限酵素の細胞外での応用については着実な進展が見られた。特に、DNA切断分子としてCe(IV)/EDTAだけではなく、ヌクレアーゼS1などの1本鎖DNA特異的なヌクレアーゼを作用させると、ゲノムDNAを選択的に切断することが可能であることを見いだしたことは特筆すべきことである。本手法をさらに発展させて、ビオチン修飾PNAを用いたゲノムDNAの切断とこれを用いた目的断片の精製とを組み合わせることで、分子生物学者にも比較的容易に利用できるバイオツールが開発できるものと確信している。 細胞内でのスーパー制限酵素の応用に関しては、細胞の複雑さ故に困難な部分が多く、再現性をさらに詳細に検討している。また、Ce(IV)/EDTAの代わりにヌクレアーゼの遺伝子を細胞に導入する系についても試み、ゲノム編集を実現すべく努力している。
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Strategy for Future Research Activity |
・細胞外での応用 ゲノム中からのDNA断片の精製法を確立し、ヒト細胞から抽出したゲノムDNAを所定位置で切断して、所定断片を回収する手法を提案する。さらに、提案した手法を活用し、ゲノムの特定領域における塩基修飾や塩基損傷について解析する手法を確立する。また、細胞をホルムアルデヒド処理してタンパク質やnon-coding RNAが固定化されたゲノムDNAを入手し、これをスーパー制限酵素で切断することで、タンパク質やnon-coding RNAと所定DNA断片との複合体を入手する方法へと発展させる。本手法により、ゲノム中のどの場所にどのようなタンパク質がどの時点で結合するかに関する詳細情報を得る。得られた情報は、これまでに広く用いられている免疫沈降法の欠点を補い、さらに厳密な分子情報を提供するものであり、関連分野の発展に大きく寄与できるものと期待している。 ・細胞内での応用 これまでにも問題になっていた相同組換えの効率の再現性について、得られた結果を総合的に再評価し、最適化を行う。ゲノム構造と相同組換え効率の相関を明らかにするため、BFPをGFPに変換する相同組換えだけではなく、ヒト細胞に内在する遺伝子をターゲットとした相同組換えを検討する。また、ヒト以外の細胞を新たな対象として選択し、スーパー制限酵素による相同組換えに対する基礎的知見を蓄積するとともに本手法の汎用化を目指す。さらに、Ce(IV)のPNAへの固定化による副反応の抑制についても、残された期間で研究を重ね、より汎用性の高い化学ツールの確立に努める。
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Research Products
(9 results)