2012 Fiscal Year Annual Research Report
DNAナノエンジニアリングによる分子ロボティクスの創成
Project/Area Number |
22220001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村田 智 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10334533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葛谷 明紀 関西大学, 工学部, 准教授 (00456154)
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 講師 (20511249)
関山 浩介 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40293675)
野村 慎一郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50372446)
藤本 健造 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90293894)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | DNAナノエンジニアリング / 分子ロボティクス / DNAナノ構造 / 分子デバイス / 分散・協調 |
Research Abstract |
コンパートメント作製:秒単位で光架橋可能なシアノビニルカルバゾール誘導体を合成した.これをもちいて,新規にDNAゲルの作製を試み,ゲル化およびゾル化が可逆的に光制御可能なDNAゲルモチーフの設計に成功した.この成果により,DNAタイルモチーフのかわりに,DNAゲルモチーフでもコンパートメントを作製できるという可能性が開けた.また,ゲルビーズなどの帯電表面へのDNA吸着およびその基板上の成長を予測するための理論構築を行い,DNA吸着には最小の長さのあることを見出した.また,細胞環境を再現する濃度と組成の溶液を調製することに成功した. インターフェース実装:DNAオリガミハッチの構築に必要な平行型のDNA乗り換え(クロスオーバー)構造の力学特性についてオリガミペンチを用いて検討し,DNAオリガミ構造体でも平行型DNAクロスオーバーの使用が可能であることが示された. 制御・通信:DNAロボットの内部状態をペトリネットで表現し,二者間相互作用によって他者状態依存によるロボットの内部状態遷移モデルを構築し,シミュレーションで検証するとともに,対応する実際のDNA反応系を構築し,実験的に検証を行った. 協調ルール:DNAロボットは群知能システムとしての振る舞いが期待されており,その基本モデルのDNA計算での実現は先駆的なものとして学術的意義が高いと考えられる.ここでは,DNAロボットの集団行動戦略形成のモデルとして,免疫ネットワークモデルのクローン選択アルゴリズムのDNA演算による実装モデルをシミュレーションによる検証を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA分子が自己集合してチャネル構造を形成し,膜に穴を空ける実験に成功した(未発表).最近,ドイツのグループによるDNAオリガミを利用したチャンネル構造の研究が報告されているが,それに比してこの成果は,きわめて単純なDNA配列で,より大きな穴があけられるという点で例のない技術となっている. また,プラスミドの可逆的な光操作法の開発に成功した.プラスミドに配列選択的に正確に光ラベリングする方法はそもそも世界的にもほとんど例がなく,可逆的かつ秒単位で操作している点においては世界唯一の方法と位置づけられる. さらに,分子ロボットのコンパートメントを構築するための基板となる,アルギン酸マイクロハイドロゲルを大量生成する技術の開発を行った. この技術は,DNAマイクロカプセルのためのマイクロハイドロゲル作製に留まらず,細胞操作,薬物送達システム(DDS),材料科学,自己組織化科学などの広範囲の分野への応用が可能であり,技術の新規性・汎用性等が注目され,本誌の内表紙でハイライトされて紹介されるとともに,Nature誌でもResearch Highlightとして取り上げられ,世界的に注目された. 研究組織全体としては,本研究の開始が代表者が東北大に着任直後であったことと合わせて,分担者の瀧ノ上,葛谷,野村があいついで所属機関を変わったこと,また1年目の終わりに東日本大震災に見舞われ,その処理に追われたことなど,かなりのハンディがあったが,なんとか乗り越えられてきていると考える.研究内容としても,DNAタイル(格子ベース)によるコンパートメントの構造確認はまだできていないが,ゲルベースのコンパートメント作製手法や,均質なビーズを大量に作製する方法,ゾルーゲル転移の光制御,単純なDNAモチーフによるチャネル構造の発見など,予定外の成果も出ており,全体としては概ね順調に進んでいると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
1.コンパートメント作製:光架橋分子を組み込み光照射することで耐熱性を獲得させることに成功したものの,光架橋分子を組み込まない天然配列のみのDNA構造体と比較してDNA構造体の合成収率が低くサイズが小さいという問題が出てきた.おそらく光架橋部位におけるひずみが大きな要因と考えられるので,cnvK周辺の配列設計を見直すことでそれら問題を乗り越えられると考えている.また, DNAマイクロカプセルの生成において,基板とするものをハイドロゲルビーズだけでなく,油中水滴マイクロエマルションや,マイクロメートルサイズのリポソームなどに変更し,表面で効率良く設計通りの自己組織化DNAマイクロカプセルが生成できる手法を検討中である. 2.インターフェース実装:DNAオリガミチャネル様構造をリポソーム膜上に付着させる試みを行ったが,表面への付着率が悪く,膜構造の観察が困難であるという結果が得られた.これを克服するため,w/oエマルジョンを用いて有限体積内かつ貧溶媒環境とすることで内張り構造を作成する試みを進めている. 3.制御・通信:制御・通信については,既存手法を利用する計画であり,現在はコンパートメントおよびインターフェースの開発に注力している状況である.これらの仕様・性能がある程度明確になった時点で,制御・通信に関する具体的な実装回路を検討したいと考えている. 4.協調ルール:成果も順調に蓄積されてきているので,成果発表を急ぎたい.
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Research Products
(34 results)