2011 Fiscal Year Annual Research Report
グリーンランド深層氷床コアから見た過去15万年の温暖化とその影響評価
Project/Area Number |
22221002
|
Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
東 久美子 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (80202620)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 賢二 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (90431478)
藤田 秀二 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (30250476)
植竹 淳 情報・システム研究機構, 新領域融合研究センター, 融合プロジェクト特任研究員 (40455473)
|
Keywords | グリーンランド / 氷床コア / 温暖化 / 環境変動 / NEEM |
Research Abstract |
・グリーンランドのNEEM地点では、平成20年度から14カ国の国際共同現地観測により、深層コアの掘削及び現場解析を実施している。平成23年度は、5月~8月に岩盤付近の掘削と現場解析を実施した。 ・22年度に引き続き、NEEMにおいて、ピット観測を実施し、層位観察と密度測定を実施した。また、ピットの断面から同位体分析、化学分析、ダスト分析用のサンプルを連続的に採取した。23年度は新たにエアロゾルの観測を実施した。 ・NEEMにおいて掘削した深層氷床コア、及びピットから採取したサンプルを、NEEMから日本に輸送した。 ・22年度に採取したピット・サンプルの分析を実施した。ピット・サンプルは、質量分析計により水素と酸素の同位体を、イオンクロマトグラフにより陰イオンと陽イオンを、コールターカウンターによりダストを分析した。また、21年度に採取したピット・サンプルを用いて、共焦点レーザー顕微鏡により微生物濃度の計測を行い、一部の層から遺伝子解析を実施した。22年度のサンプルの酸素と水素の同位体比、及びイオン濃度は、21年度のサンプルと同様、明瞭な季節変化を示していた。また、21年度のピット・サンプルの分析結果と比較した結果、同位体比、イオン濃度ともに、堆積後の変化が非常に小さいことが分かった。 ・22年度に納入された質量分析計を試験・調整し、融解法による空気抽出装置と組み合わせることにより、窒素分子の同位体比および酸素/窒素比の分析手法を確立し、氷床コア試料の分析に着手できるようになった。 ・22年度に引き続き、NEEMコアのサンプルのイオン分析を行った。イオン分析法の改良により、従来分析できなかったシュウ酸、酢酸、リン酸の分析が可能になった。 ・NEEMコアの物理解析の一環として、X線回析解析を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NEEMコアの掘削、現場解析、ピット・サンプルの採取、エアロゾル観測はすべて順調に進展した。国内へのサンプルの輸送、ピット・サンプルの分析、NEEMコアの化学分析も順調に進展した。また、微生物分析、空気分析の環境も整備され、NEEMコアの分析が可能になった。さらに、物理解析も開始することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
・NEEMコアのイオン分析、物理解析、微生物分析、空気分析を実施する。 ・NEEMコアのイオン分析データの解釈のため、NEEMにおいて、大気中エアロゾルの観測を実施する。 ・外国共同研究者によるNEEMコアの酸素同位体比の初期分析の結果、NEEMコアの深部において、氷の層に乱れがある可能性が指摘された。このことは、当初、NEEM計画の大きな目的であった、現在から最終間氷期に至るまでの気候・環境変動の連続復元ができない可能性があることを示唆している。本研究課題では、最終氷期に生じた急激な温暖化イベント、及び現在より温暖であった最終間氷期に着目して研究を進める計画であったが、もし、最終間氷期付近の氷の層に乱れがあることが証明された場合は、着目する年代について若干の軌道修正が必要となる可能性がある。しかし、最終間氷期の最温暖期を中心とする大部分は乱れていない可能性が高いので、過去に掘削されたNGRIPコア等と合わせて最終間氷期における連続的な気候復元を目指す。また、最終氷期の氷は良好な状態であることが分かっており、最終氷期に生じた急激な温暖化イベントについての研究は予定通り進めることができる。
|
Research Products
(23 results)