2012 Fiscal Year Annual Research Report
グリーンランド深層氷床コアから見た過去15万年の温暖化とその影響評価
Project/Area Number |
22221002
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
東 久美子 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (80202620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 秀二 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (30250476)
植竹 淳 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 新領域融合研究センター, 融合プロジェクト特任研究員 (40455473)
川村 賢二 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (90431478)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | グリーンランド / 氷床コア / 温暖化 / 環境変動 / NEEM |
Research Abstract |
・グリーンランドのNEEM地点では、平成20年度から14カ国の国際共同現地観測により、深層コアの掘削及び現場解析を実施した。平成24年度は、23年度に引き続き、5月~8月に岩盤付近の掘削を実施した。23年度に引き続き、NEEMでピット観測を実施しするとともにエアロゾルの観測を実施した。NEEM計画における現地観測が終了したので、8月中旬にNEEMキャンプを閉鎖した。 ・23年度に引き続き、NEEMコア・サンプルのイオン分析を行った。グリーンランドで過去に掘削されたコアと同様、海塩起源やダスト起源のイオンの濃度は、最終氷期においてDOイベントに伴って大きく変動していた。本研究では、極微量成分であるリン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸の詳細な変動を氷期のグリーンランド氷床コアで初めて復元し、ギ酸イオン以外はDOイベントに伴って大きく変動していたことを明らかにした。 ・NEEMコアの微生物濃度の計測を開始した。その結果、微生物濃度は現在のグリーンランド氷床よりも高濃度の層が多数確認された。これらの微生物高濃度層と鉱物ダストの指標となるCa2+の関連性を調べたところ、表面積雪と同様、微生物ピークと鉱物ダストのピークの間に明瞭な相関は見られなかった。 ・フィルン空気の窒素および希ガスの同位体分析を実施した。米国スクリプス海洋研究所の質量分析計を用いて希ガス同位体の分析法の改良を行ない、最終間氷期のコア試料を分析した。また、O2/N2分析を開始した。NEEMコアの物理解析においては、NEEMコアのX線回折解析と力学試験を実施した。また、フィルンコアの誘電率を測定した。 ・NEEMコアの解析データとモデル計算に基づき、最終間氷期の気温と氷床高度の変動を復元し、夏季の融解に関する情報を得た。その結果を論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・NEEM計画における氷床コア掘削が予想以上に順調に行われ、貴重なコア・サンプルを得ることができた。NEEMにおけるコア現場解析、ピット観測、エアロゾル観測、気象観測など、すべて順調に進展した。本研究グループは、コアの掘削や現場解析に参加し、NEEM計画の遂行に大きく貢献した。NEEM計画運営委員会での議論により、日本の研究者へのコア配分が承認された。配分を受けたコア・サンプルは国内へ冷凍のまま無事輸送することができ、サンプル入手もうまくいっている。 ・コアの気体成分や微生物の分析手法の開発は順調に進んでおり、分析環境は整ってきた。コアの気体分析、化学分析、微生物分析、物理分析がほぼ予定通りに進んでいる。 ・NEEM計画に参加した14カ国の研究者の共同研究により、NEEM計画の一番の目的であった、最終間氷期の気温と氷床高度の変動の復元に成功した。また、最終間氷期の氷床表面融解についての情報も得ることができた。これらの研究成果をNature誌に論文として発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
・引き続き、NEEMコアのイオン分析、X線解析、力学試験、微生物分析、気体分析を継続する。イオン分析データについては、ドイツ、スイス、イギリスとの比較により、NEEM研究グループとしての公式データセットを作成する。気体分析については、窒素、酸素、アルゴンの同位体比やO2/N2の分析を実施する。 ・NEEMで採集されたフィルン空気の分析データを用いて、過去数十年スケールの温度復元やフィルン内の対流混合過程を明らかにする。 ・平成24年度までに実施を予定していた、海水温復元のためのクリプトンやキセノンの同位体比や濃度の分析手法開発については、平成25年度に延期した。その理由は、平成25年度に国立極地研究所に新たな質量分析計が導入されることが決まり、新規の装置を用いる方が分析効率と精度が良くなるためである。現在までに空気抽出装置は完成しているため、新規質量分析計の導入後にその調整と残りの手法開発を速やかに実施し、分析を行う。 ・NEEMコアの各種分析データを用いて、気候・環境変動解析を進め、その成果を論文としてまとめる。これまでの希ガスの初期分析の結果、希ガスのデータから最終間氷期における氷床表面融解の情報が得られることが検証されたが、今後、融解の頻度や程度を明らかにする。また、ダンスガード・オシュガーイベントや氷期から間氷期への移行期など、急激な温暖化が生じた時代に着目し、温暖化に伴う環境変化やそのメカニズム解明に重点を置いて研究を進める。
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Research Products
(45 results)