2012 Fiscal Year Annual Research Report
OS型言語の文処理メカニズムに関するフィールド言語認知脳科学的研究
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22222001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小泉 政利 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10275597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 勉 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (10215650)
酒井 邦嘉 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10251216)
田中 幹大 昭和大学, 教養部, 講師 (10555072)
八杉 佳穂 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 教授 (20150063)
千種 眞一 東北大学, 文学研究科, 教授 (30125611)
遊佐 典昭 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (40182670)
行場 次朗 東北大学, 文学研究科, 教授 (50142899)
酒井 弘 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50274030)
杉崎 鉱司 三重大学, 人文学部, 教授 (60362331)
玉岡 賀津雄 名古屋大学, 国際文化研究科, 教授 (70227263)
那須川 訓也 東北学院大学, 文学部, 教授 (80254811)
後藤 斉 東北大学, 文学研究科, 教授 (90162156)
小野 創 近畿大学, 理工学部, 准教授 (90510561)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 言語学 / 外国語 / 実験系心理学 / 認知科学 / 神経科学 |
Research Abstract |
言語の理解や産出の際に、主語が目的語に先行するSO語順がその逆のOS語順に比べて処理負荷が低く母語話者に好まれる傾向があることが、これまでの研究で分かっている(SO語順選好)。しかし、従来の文処理研究は全て日本語や英語のようにSO語順を基本語順にもつSO型言語を対象にしているため、SO語順選好が個別言語の基本語順を反映したものなのか、あるいは人間のより普遍的な認知特性を反映したものなのかが分からない。この2つの要因の影響を峻別するためにはOS語順を基本語順に持つOS型言語で検証を行う必要がある。 そこで、24年度の本研究では、VOS語順を基本語順にもつカクチケル語(中米グアテマラで話されているマヤ諸語のひとつ)を主たる対象として以下の調査・実験を行った。1.で脳機能計測実験(脳波)、2.視覚世界パラダイムを用いて文産出実験、3.言語獲得実験、4.言語背景アンケート調査、5.言語獲得研究のための発話ビデオの収録とコーパスの作成。 その結果、(1)文理解の際の文処理負荷は目的語の有生性に影響されないが、(2)文産出の選好語順は目的語の有生性に影響されることや、(3)前言語的思考(メッセージ構築)の順序は、OS言語であるカクチケル語の話者においても「動作主・被動者」の順が優勢であること、しかし(4)カクチケル語話者のメッセージ構築段階における「動作」の出現順序はSO言語話者とは異なること、(5)wh疑問文の獲得時期は遅いこと、などを実証した。これらの成果の一部は、Formal Approaches to Mayan Linguistics II, Patzún, Guatemala などで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)全体として当初の計画を上回るペースで順調に研究が進んでおり、優れた成果が得られている。 (2)本研究によって、SO型言語では処理負荷の低い語順と産出頻度の高い語順が一致するが、OS型言語では一致しない、という発見がなされた。これ自体は当初の研究目的内の成果であるが、その理由を探るために行った思考の順序を調べる実験で、個別言語の文法的特性が話者の思考方法に影響を与えることを示す実験データが得られた。思考と言語の関係については古来から諸説あるが、ほとんどの研究は概念形成に与える言語の影響に関するもので、概念を組み合わせてメッセージを構築する思考過程に言語が影響を与えるかどうかに関する科学的研究はほとんどなかった。本研究によって、世界で初めて、個別言語の特性が話者の思考過程(メッセージ構築プロセス)に影響を与えることが明確に実証された。これは本研究プロジェクトの当初の想定を超える極めて優れた成果であり、大きな波及効果が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、語順処理の神経基盤の解明を目指した研究を行う。 平成26年度は、主に研究成果のまとめと発表を行うが、必要に応じてフォローアップ実験を実施する。
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Research Products
(30 results)