2011 Fiscal Year Annual Research Report
スピンダイナミックス可視化技術の開拓と新奇機能素子開発への展開
Project/Area Number |
22226003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
重川 秀実 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20134489)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / 超短パルスレーザー / スピンダイナミックス / ナノテクノロジー / フェムト秒 / ポンプブローブ法 / スピントロニクス / 可視化 |
Research Abstract |
本プロジェクトでは、独自に開発を進めてきた光励起STM技術を基盤として、ナノスケールでスピンの計測・可視化を可能にする技術の開発を展開するが、本年度は、昨年度の結果を受け以下の成果を得た。 (1)地震の影響で導入が遅れていたスピン計測用走査トンネル顕微鏡(STM)装置(ドイツオミクロン社との共同開発)の納入。本システムは、極低温(2K)において磁場(垂直方向3T、水平方向1T)を印加した状態で超短パルスレーザーを用いた時間分解測定を行うことが可能な設計になっている。遅れた時間を利用して、他には無い高周波の信号を計測する仕組みも検討。 (2)Mn/GaAs系において、原子構造の変化に伴うキャリアダイナミックスの時間分解測定に成功。 (3)スピン計測の準備としてグリシン/Cuテンプレートによる孤立C60、In/Si等の予備実験を進めた。 (4)バルク内と表面近傍でのキャリアダイナミックスが計測される条件を明らかにし、熱の影響の解析などとあわせて、半導体を対象とした時間分解測定の基本的な物理を明らかにした。 (5)励起された電子を直接引き抜くことで時間分解測定を行うことに成功、拡散などの測定を確認。 (6)円偏光励起を用い、GaAsのスピン緩和に対応すると思われるピコ秒領域の信号を確認。 (7)光強度を落とさず(特許取得)、パルス光の干渉による影響を取り除く仕組みを開発し、超高速領域での安定した測定を可能にした。 (8)マルチプローブシステムの開発を進め、回路などの改良はほぼ最終段階に入った。 (9)W基板を処理することが可能な仕組みを導入し、安定したスピン制御実験の準備を行った。 (10)STM発光でスピンの状態を解析するため、偏光測定が可能なシステムの設計を行った。 以上、地震の影響でレーザー2台が故障し半年程時間分解・制御実験が停滞し、STM装置の納入が遅れたが、その間、他の準備を進め、全体として、当初の計画に沿って成果をあげることができた。STM装置については遅れた期間に検討を進め計画時より高い性能を付加。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地震によるレーザーの故障により半年以上の時間をとられたが、実績の概要の欄にまとめたように、原子レベルの構造変化により変調されたキャリアダイナミックス計測、円偏光励起を用いた時間分解スピンダイナミックスに対すると思われるピコ秒領域の信号の確認などが実現した。また、スピン計測用STMは地震により納入が1年遅れたが、その間の検討により計画時より高い性能を付加したシステムが可能となった。マルチプローブシステム開発もソフト開発を進める段階に入り、全体として、ほぼ、予定通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られてきた結果をもとに、予定に沿って計画を押し進める。 スピン計測用STMの納入は1年遅れたが、その間、検討を行うことで新たな機能を付加することが可能になった。今後、同システムを用い、これまで準備してきた磁性原子1半導体や他の系に対し時間分解スピン測定を行う技術を開発し実験を進めるとともに、新しく付加した高周波測定系を利用するスピン制御・計測システム・技術の開発を開始する。あわせて、STM偏光発光分光、マルチプローブ計測によるスピン流計測などの計画を推進する。
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