2012 Fiscal Year Annual Research Report
スピンダイナミックス可視化技術の開拓と新奇機能素子開発への展開
Project/Area Number |
22226003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
重川 秀実 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20134489)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / スピンダイナミックス / 可視化 / 時間分解計測 / 超高速分光 / ナノ科学 |
Research Abstract |
本プロジェクトでは、独自に開発を進めてきた光励起STM技術を基盤とし、ナノスケールでスピン計測を可能にする技術の開発を展開するが、本年度は、昨年度までの結果を受け以下の成果を得た。 1.基盤技術の展開 (1) スピン計測の準備として、間接遷移p-WSe2を試料として光励起キャリア直接計測を試み成功した。(2) (Mn,Fe)/GaAs系を対象として時間分解測定を行うことを試み原子レベルの分解能で評価することに成功した。(3) 複雑な時間分解計測の過程を理解するため、シミュレーションと実験結果をあわせて解析するにより、時間分解信号の起源、計測の条件などについての基本的事項を明らかにすることに成功した。(4) 分子スピン計測の準備とし、キラリティー制御、ナノ構造制御などの作製条件を確認した。 2.スピン計測の展開 (1)ポンプ-プローブ法を用いた円偏光励起・時間分解測定に新しい変調方式を導入し、安定した動作が可能な測定システムを構築することに成功した。(2)同手法を用いる事で、Mn/GaAs構造において、吸着量に依存してスピン寿命がピコ秒レベルで変化する様子を、STMを用いて時間分解測定する事に世界で初めて成功した。(3)あわせて、p-GaAsを試料とし、スピン寿命の温度依存性のSTM時間分解測定にも初めて成功した。(4) 相補的な情報を得ることを目的とし、スピンダイナミックスをSTM発光により高効率で計測可能なシステムを作製し評価した。(5) スピン計測用STM装置に高周波のワイヤを組み込み、磁場印加・低温において、広周波数領域に亘る測定を可能にするシステムの開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた様に、準備としては、(1)光励起キャリアの直接計測、(2)単一原子レベルでの時間分解測定、(3)時間分解信号の解析、などに成功した。あわせて、(4)新しい偏光の変調法を開発し、ピコ秒領域で現れるスピンダイナミックスをSTMにより直接計測するシステムの構築に成功した。続いて、同手法を用いGaAsを試料として、(5)Mn原子吸着量のスピン寿命への影響や、(6)スピン寿命の温度依存性のデータ、測定に成功。また、これら結果に加え、(7)新しく導入した装置の改良・整備も進み、磁場印加によるスピンダイナミックスへの影響、磁場制御によるダイナミックス変調計測のための試料ホルダー設計・作製、分子構造制御・伝導特性解析など、更なる結果を得るための準備も順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を基に、 (1) 半導体ナノ構造を作製し空間的なダイナミックス計測の試み、 (2) 磁場印加による歳差運動測定の試み、 (3) 磁場制御下でのスピンダイナミックス計測の試み、 (4) 他メカニズムを持つ試料への展開、 などを予定している。
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