2012 Fiscal Year Annual Research Report
次世代シークエンサーを用いた生殖系列のエピゲノム修飾とトランスクリプトーム解析
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22228004
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
河野 友宏 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (80153485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 穣 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (40323646)
外丸 祐介 広島大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90309352)
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Project Period (FY) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | エピゲノム / 生殖系列 / 次世代シークエンサー / 始原生殖細胞 / メチローム / 脱メチル化 / DNAメチル化 |
Research Abstract |
本研究は、哺乳類の雌雄生殖系列におけるエピゲノム情報のリプログラミングを解明するため、遺伝子発現制御する主要因であるDNAメチル化の全貌を生殖細胞および胚において次世代シークエンサーを用いて明らかにするために実施した。昨年度までの研究開発により、Shotgun Bisulfite Sequencing解析の実験系の改良に成功し、10ナノグラムのゲノムDNA(マウスでは 1000細胞相当)からの全ゲノム包括的DNAメチル化マップ(DNAメチローム)の作製が可能となった。この技術的革新により、胎仔始原生殖細胞、および遺伝子欠損マウスの卵子など微量サンプルからのDNAメチローム解析に目途が立ち、各解析を実行した。 始原生殖細胞におけるメチローム解析では、胎齢10.5日, 13.5日および16.5日の雌雄始原生殖細胞(PGC)を用いて解析を実施した。これまでに、胎齢10.5日のPGCでは16-17%のCpGがメチル化されていたが、胎齢13.5日のPGCでは、2-3%にまで低下していることが判明した。また、一部のレトロトランスポゾンは、脱メチル化に対する抵抗性を示した。しかし、胎齢16.5日の雄PGCでは、新規のメチル化が生じ始め、31%にまで上昇した一方、雌PGCでは変化は認められず、明確な雌雄差が形成されていた。一方で、雄のX染色体上の遺伝子の多くが新規メチル化を受けておらず、染色体特異的なリプログラミング機構の存在が明らかとなった(Genome Research 2013)。また、DNAメチル基転移酵素遺伝子のノックアウトマウス卵子における解析により、卵子で蓄積するnon-CpGメチル化はDnmt3a,3Lに依存することが明らかとなった(PLoS Genetics 2013)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マウスの生殖系列全体におけるDNAメチローム解析を目指して研究をスタートさせたが、実施3年目でおおむね全生殖系列におけるDNAメチロームの全容を、単一塩基レベルで把握することに世界で初めて成功した。特に使用可能な細胞数に厳しい制約が生じる生殖系列の細胞を対象にDNAメチローム研究を推進するには困難が伴っていたが、安定的なDNAメチローム解析の実験系の確立、次世代シークエンサーを用いたメチル化解析の順調な進行、さらには膨大なデータのインフォマ解析の問題を解決したことが、順調な研究の進展に繋がっている。間違いなく世界的にも最も膨大なデータ解析を実施しているグループである。我々の解析手法の精度の高さは、国内外の研究者に認められており、問い合わせも増加している。また、得られた成果も、Genome Research (IF13.6)、PLoS Genetic (8.7) などレベルの高い国際誌に掲載されており、国内外の研究者からも評価されている。また、発表論文に使用したシークエンスデータはDDBJに登録しており、日本発のエピゲノムのマスターデータとして活用が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに当初の目標をおおむね達成したことから、新たな課題に挑戦し研究を大く展開する予定である。まず、精子・卵子・始原生殖細胞のメチローム解析は終了したことから、受精卵における脱メチル化のプロセスの詳細な解析を進めている。今年度中にさらに完成度の高い詳細な解析を完了させ、論文報告を目指す。さらに今後は、生殖系列におけるメチル化および脱メチル化に関与するシトシン残基のヒドロキシル化などの変化についても解析を展開する予定である。卵子形成過程におけるヒストン修飾にも着目しており、ChIP-seqによる修飾状態の全ゲノム解析も計画している。また、現在すでに発表されたデータを公開するためにブラウザーの構築を進めており、近々公開できる運びである。
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Research Products
(13 results)