2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22241004
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 隆 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70167443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷部 文雄 北海道大学, 地球環境科学研究科, 教授 (00261735)
林 政彦 福岡大学, 理学部, 教授 (50228590)
岩崎 杉紀 防衛大学校, 応用化学群, 講師 (30535274)
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Keywords | 熱帯圏界面 / エアロゾル / 巻雲 / OPC / ライダー / CFH / FLASH / インドネシア |
Research Abstract |
H23年度の計画に従い、前年度に引き続き低緯度上部対流圏エアロゾルと巻雲を高精度で測定するため、まず気球搭載OPCの改造を行った。この結果、OPCは前年度の状態で、摂氏200度の設定でも硫酸塩が蒸発しないことが明らかになり、さらなる改造もしくはより高温での温度設定が必要であることが判明した。またこの年度の新たな試みとして気球搭載雲粒子ゾンデ(HYVIS)の準備を行った。ライダーは昨年度故障した1064nm検出器電源を新たな電源と交換した(無償)。水蒸気の測定に関しては、低湿度における高精度測定が可能な気球搭載鏡面冷却型露点湿度計(CFH)とライマンα計測型湿度計(FLASH)を調達し観測に備えた。現地観測所の使用に関するインドネシア宇宙航空局(LAPAN)との共同研究は前年度の取り決めが引き続き有効であることを確認した。 観測機器を現地に輸送した後、観測キャンペーンは2012年1月4日から1月18日にかけて、インドネシア東部ビアクで実施した。現地到着後、ただちに測定器の立ち上げを行った。観測期間中、大部分の測定器は順調に動作し、気球搭載機器は放球した分はすべて地表付近から下部成層圏に到る間の測定に成功した。ライダーはほぼすべての期間、データを取得した。今期の観測では、昨年末にインドネシア、ジャワ島における火山噴火で大気中に放出された火山性のエアロゾル層が前年に引き続き対流圏界面付近で連続的にライダーにより観測された。このエアロゾル層は加熱OPC測定の結果、大部分は揮発性の物質(おそらく硫酸水溶液)であったが一部不揮発性の粒子と内部もしくは外部混合していることが明らかとなった。また、前年同様、このエアロゾル層内に巻雲が生成する事象が見られたが、二波長ライダー観測によって推定される雲粒子個数濃度はOPCによる揮発性エアロゾル個数濃度より約2桁小さく、巻雲の氷水量は飽和水蒸気量の約10%であることが明らかとなった。これらの結果は熱帯圏界面付近の巻雲の生成とそれに伴う脱水過程の解明に極めて有意義な情報と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3年(3回のキャンペーン)の観測計画の内、2年間(2回)の観測がほぼ予定通りに実施できた。また、計画にとっては幸運にも、火山噴火起源の硫酸エアロゾル層が熱帯圏界面層内に存在し、その中での巻雲の生成をとらえることができた。このため、研究の主要目的である巻雲の核としての、硫酸エアロゾルの働き解明につながる貴重な観測結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間(2回)の観測で得られた結果を詳細に解析するとともに、3年目(3回目)の観測を慎重に計画・実施する。また、数値モデル計算結果との比較から、熱帯圏界面付近のエアロゾルがどのように氷晶核として働くかを明らかにする。また観測・研究結果を論文としてまとめ公表する。
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