2011 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル帝国成立史の解明を目指した環境考古学的研究
Project/Area Number |
22242025
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
白石 典之 新潟大学, 研究推進機構, 教授 (40262422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 恭通 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 教授 (40239504)
小畑 弘己 熊本大学, 文学部, 教授 (80274679)
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
相馬 秀廣 奈良女子大学, 文学部, 教授 (90196999)
篠田 雅人 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (30211957)
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / モンゴル帝国 / 環境考古学 / モンゴル / 中国 / 考古学 / 東洋史 |
Research Abstract |
本研究は、歴史上著名な出来事でありながら、文字資料が不十分でその過程が明らかになっていない13世紀の「モンゴル帝国成立の背景」という課題ついて、考古学、とくに環境考古学的アプローチから解明を試みようとするものである。研究計画2年目の平成23年度は、前年度の準備的期間の成果を踏まえ、研究上最も重要となる環境考古学的基礎データの集積に主力が注がれた。 以下、具体的な実績を記す。平成23年4月下旬から5月上旬にかけてモンゴル国東部山岳の泥炭層が発達した地域で古環境試料の収集を行った。帰国後年代測定を委託して実施したところ、モンゴル帝国と関連する時期の試料であることがわかった。その報告をかねて6月に東京で研究集会を開き、重要なデータなので、さらに補足追求して充実すべきとの結論が得られた。同月には中国内モンゴル自治区でモンゴル帝国期遺跡の立地データ収集を企図した踏査を行った。環境変化研究に資する新遺跡を発見できた。7月にはモンゴル国東部の金属工房遺跡の踏査が行われ、金属生産と周辺環境破壊に関するデータを収集した。8月から9月にかけてモンゴル国チンギスカン本営(アウラガ)遺跡で発掘調査が実施され、チンギスカン期の住居跡が完全な形で検出された。そこでは多くの環境考古学関連資料の収集に成功した。12月にはモンゴル人考古学者を招聘し、九州の大学を会場にした研究会で成果発表した。また、一般および学生に最新モンゴル考古学に関する情報を提供することに寄与した。平成24年4月下旬にはモンゴル東部の泥炭地の再調査を行った。その試料に関して年代分析を行った結果、本研究のターゲットの時期にきわめて整合する試料だということが判明した。 このように本年度の研究では、野外調査で良好な資料を得ることに成功した。また、研究者招聘で研究成果の公開と国際情報共有に、おおむね成果をあげたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モンゴル東部の山岳地域における泥炭層中から、花粉など多くの植物遺存体を採取し、それらがモンゴル帝国期からその直前にさかのぼる試料だと判明したことは、大きな成果である。この時期の良好な古環境試料はこれまで知られていない。また、アウラガ遺跡でチンギスカン期の古環境試料の収集に成功した。これらの分析が進めば、モンゴル帝国成立史の解明に資する点は大だといえる。比較研究のために行った内モンゴルの遺跡立地踏査、あるいは金属生産の周辺環境に及ぼす影響調査なども着実に実施でき、良好な資料を得られた。データ収集の点で本研究は、おおむね順調に進展していると評価できよう。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、泥炭層から得られた植物遺存体、とくに花粉試料の分析が急務である。点数が多いので丹念かつ正確な資料化が求められる。次年度以降は必要に応じて補足調査を行いながら、資料化と成果公開に向けた作業に力を注ぎたい。また、考古資料(アウラガ遺跡出土遺物)と金属生産遺物が、環境変遷データとどのように関連性を持つのか、それを結び付ける根拠となるような遺物、あるいは文字資料の追求も行いたい。
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