2012 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル帝国成立史の解明を目指した環境考古学的研究
Project/Area Number |
22242025
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
白石 典之 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (40262422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本郷 一美 総合研究大学院大学, その他の研究科, 准教授 (20303919)
篠田 雅人 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (30211957)
村上 恭通 愛媛大学, 学内共同利用施設等, 教授 (40239504)
小畑 弘己 熊本大学, 文学部, 教授 (80274679)
相馬 秀廣 奈良女子大学, その他部局等, 教授 (90196999)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / モンゴル帝国 / 環境考古学 / モンゴル / 中国 / 考古学 / 東洋史 |
Research Abstract |
モンゴル帝国成立と興隆の背景を、環境考古学的に解明することを目的とし、外国フィールド調査と国内整理作業を両輪として研究を推進した。 外国調査では、中国大興安嶺西麓の森林草原混交地帯のモンゴル帝国期遺跡とその立地環境を調べる現地踏査を実施した。とくに、これまで情報が少なかったチンギス・カンの諸弟「東方三王家」領地内の、詳細な記録が取れた意義は大きい。簡易測量、周辺土壌、植生などの良好なデータが得られた。そのまとめは進行中である。また、モンゴル国アウラガ遺跡でチンギス・カン勃興期の住居遺跡を発掘した。13世紀前半のモンゴル帝国成立期の建物で、大変興味深い。動物骨、炭化植物遺存体を多数採集できた。この整理作業も進行中である。 国内作業としては、モンゴル国ヘンティ山地周辺で採集された泥炭試料による花粉分析を行った。これは平成22・23年度に本科研で採集されたものである。年代の速報ではモンゴル帝国時代に対応する良好な堆積物であることがわかっていて、詳細な分析が求められている。また、衛星写真分析用のソフトを購入した。これは現地踏査できない地域の環境情報把握に資すると考える。さらに、業者に委託し、放射性炭素年代と鉄資料の金属学的分析も行った。特筆すべきはゴビ地域の金属学的分析である。対象試料は匈奴時代のものであったが、燃料などの資源の少ない地域での手工業の実態を知る上で重要かつ、比較資料としてモンゴル帝国研究に示唆的であった。 以上の調査研究は順調に進行し、成果が蓄積されている。ただ、ひきつづいて検討する余地が残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで踏査が難しかった大興安嶺西麓の森林草原混交地域の現地踏査が実施でき、詳細なデータが得られたことは、今後の研究推進の上で意義深い。また、モンゴル帝国期ではないが、ゴビ地域という燃料の少ない場所での手工業生産の実態がわかる鉱業試料を入手し、それを金属学的に分析できたことは、比較研究の視点から重要である。なぜならば、ゴビ地域の鉄や銅の使用はモンゴル帝国の勃興と大いに関連するとみられてきたが、研究の端緒が得られなかったからだ。本試料の発見により、同地域で悉皆的な調査を継続すれば、当該期の試料も得られると期待できる。 ただし、動物骨分析と花粉分析に多少の遅れがみられる。試料量が膨大なのがその理由だ。そのあたりのスピードアップが課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
地域的にも時代的にも、目的とする環境考古学的資料が整いつつある。整理・分析のスピードアップを図りながら、それら個別の成果をどのように統合し、モンゴル帝国の興亡史を描きだせるか、研究後半に入るにあたり、検討する必要がある。そこで、文献史学の研究者も含めて、研究集会などを活発化し、研究分担者・連携研究者間の意見交換の機会を増やしたいと考えている。
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Research Products
(2 results)