2013 Fiscal Year Annual Research Report
支配的地位の濫用規制と不公正取引の規制が切り開く東アジア競争法の新しい地平へ
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22243004
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
稗貫 俊文 北海学園大学, 法務研究科, 教授 (70113610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂口 一成 大阪大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10507156)
板谷 淳一 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (20168305)
栗田 誠 千葉大学, その他の研究科, 教授 (20334162)
林 秀弥 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30364037)
中山 武憲 名古屋経済大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40278388)
土田 和博 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (60163820)
鈴木 賢 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80226505)
川島 富士雄 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (80234061)
須網 隆夫 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80262418)
向田 直範 北海学園大学, 法学部, 教授 (90104695)
瀬領 真悟 同志社大学, 法学部, 教授 (90192624)
岡 克彦 福岡女子大学, 文理学部, 教授 (90281774)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | カルテル規制 / 合併規制と経済学 / グローバル下の市場支配力濫用 / TIBORと独占禁止法 / 韓国独禁法の2013年改正 / 独禁法と金融商品取引法の課徴金 / 中国のカルテル規制 / 反独占法違反の損害賠償 |
Research Abstract |
今年度も、東アジア競争法などの国際シンポジュウムを開催し、また、各種の国際シンポジュウムに参加した。 2013年9月6に、ACA(アジア競争協会)の年次総会が、ソウルのホテルプレジデントで開催され、韓国の公正取引委員会・委員長のDae-lae NOH氏の基調報告のあと、①カルテル規制、②合併規制の最近の展開と経済学、③グローバル下の市場支配力の濫用、の3つのセッションで、報告と議論が行われた。栗田誠教授(千葉大学)は、③のセッションで、JASRACの私的独占の事例を報告した。稗貫俊文は、閉会の辞で、財閥に対する規制を強める韓国独禁法の2013年改正を自由競争の観点から評価した。そのほか研究分担者の川島富士雄教授、林秀弥教授(いずれも名古屋大学)が参加した。 2013年11月23日、24日に、台湾の銘傳大学法学院(台北)で、国際シンポジュウム「金融システムと競争法」が開催された。韓国、中国やドイツの学者が参加した。栗田誠教授が「金融法と競争法規制の交錯・・・TIBORと独占禁止法」の報告をし、中山武憲教授(名古屋経済大学)がコメントした。また、林秀弥教授が「金融商品取引法と独占禁止法のエンフォースメント比較-課徴金制度を中心に-」という報告をした。川島富士雄教授は中国の徐士英教授(華東政法大学)の報告にコメントした。 2013年12月15日に、札幌の北海道大学で、「中国のカルテル規制の現状と課題」をテーマに国際シンポジュウムを開催した。叶高芬教授(浙江理工大学法政学院)が中国のカルテル規制の課題を紹介し、王健教授(同大学)がカルテルに関する損害賠償の事例を紹介した。その後、向田直範教授(北海学園大学)らとの議論が行われた。 2014年3月27日に、稗貫研究代表者(北海学園大学)は、東京の早稲田大学で、須網隆夫教授(早稲田大学)と栗田誠教授と、来年度の研究会計画と今後の研究体制、出版計画について議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東アジアの政治的には困難な時期に、経済法・競争法の専門家としての相互の信頼関係により、絶えることのない交流が今年度も実現された。 東アジアの不公正取引は、台湾が典型的であるように、自由競争よりも公正な競争、公正な競争よりも公正な取引という価値のヒエラルヒーが、経済弱者保護の色彩をもって形成されている。韓国でもそうである。日本もその色彩を失っていない。中国は不透明であるが、反不正競争法がそのような色彩を持って運用されているようである。 これが各国の市場支配的地位の濫用規制にも反映しているようである。中国の反独占法は、国有企業が搾取的な濫用行為を行っており、それが当局に摘発されるようになり、改善される方向へ舵が切られたようにみえる。台湾の競争法も、土着のために、一時的か消費者保護の価格濫用の規制を強めている。韓国でも、財閥の横暴に対する規制が搾取規制という様相を呈している。搾取規制という東アジア法的な色彩が明確に形をとりつつあるようにみえる。こうした知見を得ることが、我々に何をすべきかを問うているか、まだ定かに言い難いが、ようやく、何らかの指針を求めるべき段階にきていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度になるが、これまでのように、研究交流を通じて、東アジア法の特徴の認識を深めることにしたい。特に昨年度に韓国側との合意により計画しながら、韓国側の事情で延期せざるを得なかった「知的財産と競争法」の関係について国際シンポジュウムを開いて、そのテーマのなかにグローバルな課題を確認するだけでなく、東アジア的な特徴があるか、それは何であるかを検証したいと考えている。 また中国側から、我々に、韓国や台湾を含めて、行政独占の問題を論じるシンポジュウムへの参加を求められている。これは韓国では財閥の規制、日本では規制緩和の課題が論じられるべき場となると思われる。これに積極的に参加したい。 さらに例年参加しているアジア競争協会(ACA)の年次総会に参加して、東アジアの競争法の改正や運用における新しい動向を知るための会議に参加したいと思う。 最後に、これまでの研究をまとめて、韓国、中国、台湾のメンバーと協力して、数年後に「支配的地位の濫用規制と不公正取引の規制」に関する英語出版の道を探ることにしたい。
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