2012 Fiscal Year Annual Research Report
朝鮮半島から見た戦後東アジア地域秩序の形成と変容-新たな地域像を求めて
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22243018
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
浅野 豊美 中京大学, 国際教養学部, 教授 (60308244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 修 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (00351304)
西野 純也 慶應義塾大学, 法学部, 准教授 (10453531)
松田 春香 大妻女子大学, 文学部, 助教 (10552557)
李 鍾元 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 教授 (20210809)
木宮 正史 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (30221922)
磯崎 典世 学習院大学, 法学部, 教授 (30272470)
吉澤 文寿 新潟国際情報大学, 情報文化学部, 教授 (30440457)
外村 大 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40277801)
春木 育美 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 准教授 (40554944)
山内 康英 多摩大学, 情報社会学研究所, 教授 (50247417)
池田 慎太郎 関西大学, 法学部, 准教授 (80364107)
長澤 裕子 二松學舍大學, 国際政治経済学部, 非常勤講師 (90626730)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 冷戦 / 東アジア / 日韓関係 / 日朝関係 / 韓国 / 地域主義 / 分断国家 / 脱植民地化 |
Research Abstract |
第3年目の本年度は、研究発表については、昨年度にメンバーの間で共有された問題意識に立ち、各自の報告を韓国の学会(韓国日本学会、高麗大学アジア問題研究所、東北アジア歴史財団)、および、日本における学会(現代韓国朝鮮学会、日本国際政治学会、日本政治学会等)において個別に行うことを原則とし、それをもって他の研究者からレビューを受ける機会とした。 ただ、全体企画として、高麗大学アジア問題研究所との間で日韓中合同シンポジウム「Historical Reflections on Korea-China-Japan Relations」を5月に共催し、本プロジェクトからも、司会者や討論者として参加することで、現代史研究者とのネットワークを拡大した。 各種の調査調査も活発であった。国立国会図書館、朝鮮大学校、広島大学、九州大学、外務省外交史料館等において調査を行った。収集された資料としては、『民団大阪40年史』『民団五十年史』『大阪婦人会創立50周年記念史』等があり、外交史料館においては、日韓定期閣僚会談資料、米中接近後の日本の対北朝鮮議員外交に関する公文書の開示請求・複写を行った。また、国会図書館では日韓議連・日朝議連の結成に対する自民党議員の関与に関する雑誌記事・論説の収集、日朝貿易会や協亜物産(日朝貿易の日本側商社)に関する基礎的事実の収集を継続した。 昨年までの海外調査で収集された資料を読み込むことによって、1972年の「米中接近」と日中正常化の以後になると、韓国も対中関係正常化を望み始めていたたことや、1970年代の日本の外交・安全保障政策が朝鮮半島や中国情勢の変化との密接な関連のもとに議論されていたことが判明し、朝鮮半島の南北和解の文脈をより立体的に浮かび上がらせることができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新たな資料の発掘も進み、1970年代の朝鮮半島を中心とする国際秩序の激動を研究しようという大きな枠組みに基づいた研究が、各界で評価されるようになってきたと同時に、1960年前後の日韓交渉に関する資料集が7巻本で刊行された。 さらに、東アジアの地域史という枠組みの必要性を共有するカウンターパートとしての韓国の高麗大学アジア問題研究所との間での対話が深まり、個別のプロジェクトが具体化し始めたと同時に、日韓中のシンポジウムをソウルで開催することができた。これは、日韓の1965年に正常化された二国間関係が、1970年代の米中和解、日中正常化、南北和解と破綻という激変の中でいかに変質していったのかを考える機会となった。これを契機として、2013年度には、東京で会議を続けることが内諾され、現在はそのアレンジをしている最中である。東アジアの転機となった時代に焦点を合わせ、積み残された問題や失われた可能性を拾い上げ、最後に具体策をラウンドテーブルで話し合うべく、事前準備を積み重ねていきたい。これにより、最終成果を一般社会に向けて発信していくための場が確保された。歴史研究の成果を土台とすることで、東アジア地域全体の利益や潜在的可能性を意識できるような知的枠組みを洗練させていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
日韓交渉に関する資料集を刊行し終えると同時に、1970年代に至る日韓関係の新しい資料集への見通しを付ける。さらに、研究成果を一般に還元すべく、1970年代における東アジア国際関係の変化と、それが領土問題としていかに引き継がれているのかに関するシンポジウムを、韓国の高麗大学のアジア問題研究所、および、北京の清華大学とともに連携して、9月末に東京で開催する。 これをもって研究成果を社会に還元する場として、現代の国際関係の問題とも絡めながら、歴史的な研究成果を土台とした知的枠組みを打ち出し、洗練させていきたい。三国の研究者が、地域全体の転換点や現代史を意識しながら、歴史的なイマジネーションとともに、地域全体の共通の利益や価値を意識する場としていきたい。 また、各自の各種学会での報告を続けるとともに、お互いの最終成果をいかにとりまとめるかについて、大きな問題意識の共有の上に細部のつめを行い、成果出版の準備をつめていくこととしたい。 さらに、日韓交渉に関する資料集を刊行し終えると同時に、1970年代に至る日韓関係の新しい資料集への見通しを付ける。
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