Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲津 將 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (80422450)
吉田 聡 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 研究員 (90392969)
小守 信正 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, 主任研究員 (80359223)
磯辺 篤彦 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (00281189)
中村 啓彦 鹿児島大学, 水産学部, 准教授 (50284914)
万田 敦昌 長崎大学, 水産学部, 准教授 (00343343)
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Research Abstract |
2011年6月に鹿児島大学・かごしま丸で梅雨期の東シナ海の黒潮横断観測を行った.同観測ではADCP(音響ドップラー流向流速計),XBT(投下式水温水深計),GPSゾンデを用い,72時間の観測時間内に黒潮上を3往復した.このように短期間に西岸境界流を3往復(6断面)して,大気応答を調べたのは世界初である.また,2010年12月に実施した東シナ海黒潮前線域における大気海洋観測で発見した従来の知見と異なる前線上における海上風の局所的な低下現象について,領域大気モデルを用いて,この海上風の弱化が,前線横断方向に風が吹き始める時期に限られた,一時的な現象であることを確認した。さらに,衛星風データであるASCATを用いて,上記の解析に使用するべく格子データセットを作成し,国際学術誌にて発表するとともに,インターネットを通してデータを無償配布している。 数値計算では,地球シミュレータ上の高解像度大気大循環モデル実験から,東シナ海および日本南岸では海面水温勾配に対して大気下層は収束として応答し,日本東沖の黒潮親潮続流域では発散として応答していることを明らかにした。双方向ネスト大気モデルにおいて,東シナ海における黒潮が作り出す海面水温勾配が全球大気に及ぼす影響を調べる実験の準備を行った. また,梅雨期の黒潮に対する平均的な大気応答が,梅雨降水の黒潮上への集中をもたらすこと,および大気境界層を超え対流圏上層まで及ぶ影響を与えていることを,衛星および再解析データ解析,そして領域気象モデルを総合して明らかにした.この大気応答は,我々が2010年に提案したDeep heating modeと整合的であり,局所応答の強さは夏季のメキシコ湾流上と同程度であるが,大規模梅雨前線帯およびそれにともなう降水が加わることで,中緯度海流上の対流性降水としては世界で最も強いことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
観測,衛星などのデータ解析,そして数値計算とも順調に進展している.特に梅雨期において,黒潮が上空の大気に影響を与え,かつ中緯度海流上の対流性降水としては世界で最も強いこと見出したことは(Sasaki et al., J. Climate掲載確定),梅雨という長年研究されてきた対象に新たな視点を加え,世界的な気候研究に東シナ海の梅雨期の大気海洋相互作用を適切に位置付けるものである.この重要な研究がすでに掲載確定となったのは,計画以上の進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
我々が特に観測領域としている東シナ海の黒潮付近において,他の研究プロジェクトでもH24年度には,同時期あるいは隣接時期に観測がおこなわれる予定である.そこで,これらのプロジェクトと有機的に連携し,より高い成果が得られるように努める.
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