2011 Fiscal Year Annual Research Report
非可食系バイオマスからの新規生分解性バイオベースプラスチックの創製と高性能化
Project/Area Number |
22245026
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 忠久 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30281661)
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Keywords | バイオマスプラスチック / ヘミセルロース / キシラン誘導体 / 微生物産生ポリエステル / フィルム / 繊維 / 結晶核剤 / 大型放射光 |
Research Abstract |
本研究では、これまでほとんど利用されていないヘミセルロースの主要成分であるキシランに着目し、エステル化によるプラスチック化とポリ乳酸に対する結晶核剤としての応用について検討を行った。広葉樹であるユーカリのクラフトパルプから抽出したキシランを用いて、炭素数が2から16の種々のアシル基で置換されたキシランエステルを温和な化学反応条件下で合成した。その結果、キシランエステル誘導体の分子量は約4-7万であり、透明度の高いキャストフィルムを作製することが出来た。DSCによる熱分析の結果、キシランエステルは融点を持たない非晶性の高分子であるが、ポリスチレンより高いガラス転移点を示すことから熱安定性に優れていることがわかった。さらに、エレクトロスピニング法によりナノファイバーを作製することにも成功した。これらの結果から、キシランエステルがプラスチック製品と成り得ることがわかった。さらに、キシランエステル誘導体をポリ乳酸にわずか0.1%添加するだけで、半結晶化時間が石油合成高分子であるポリプロピレン並みに速くなることを見出した。 また、微生物により合成した超高分子量バイオポリエステルを用いて、冷延伸・二段階延伸法などを用いて高強度フイルム及び繊維の作製に成功した。大型放射光の広角X線回折により、高強度材料には通常の分子鎖構造である2回らせん構造に加え、新たに平面ジグザグ構造が発現していることがわかった。さらに、昇温過程における時分割X線回折とDSC測定を組み合わせることにより、平面ジグザグ構造の熱的挙動についてリアルタイムで観測することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(1)化学合成によるヘミセルロースのプラスチック材料化、(2)微生物合成による新規バイオポリエステルの合成および高性能化、に関する研究を大きな柱としている。これまでヘミセルロースは分子量が小さい、分岐などがあり構造が複雑であるなどの理由からプラスチック原料として利用されてこなかった。しかし、今回我々の研究により非常に透明性の高いフィルムできること、さらにナノオーダーの直径を持つナノファイバーにも加工できることがわかった。さらに、現在最も研究開発が進んでいるバイオベースプラスチックであるポリ乳酸に少量添加するだけで非常に優れた結晶核剤効果を示すことを見出すなど、当初の予想以上の効果が出ている。さらに、微生物により合成したバイオポリエステルも非常に高強度な材料となりえることを見出せたことは、今後の大きな発展につながると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回用いたエステル化は非常に簡単な化学合成法であり、キシランだけでなく他の天然多糖類に応用することが可能である。今後は、グルコマンナン、カードラン、プルランなどの様々な天然多糖類に応用し、石油合成プラスチックにない、新しい構造を有するバイオマスプラスチックの創製を行う予定である。一方、今回微生物により合成したバイオポリエステルは、石油化学合成では合成不可能な巨大な分子量を有している。今後は、この巨大高分子量のポリマーの未知の物性を明らかにするとともに、高性能材料創製に向けた新たな成型加工技術の開発を行う予定である。さらに、超高分子量バイオポリエステルと天然多糖類エステル誘導体のブレンド材料を作製し、延伸などの加工を施すことにより、様々な熱的性質や物性を有する材料の開発を行う予定である。
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