2011 Fiscal Year Annual Research Report
相同DNA組換え開始自在制御による新規ゲノム多様化機構の検証と標的組換えの実現
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22247002
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
柴田 武彦 独立行政法人理化学研究所, 遺伝制御科学特別研究ユニット, ユニットリーダー (70087550)
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Project Period (FY) |
2010 – 2014
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Keywords | ゲノム構築・再編 / 遺伝子多様性 / 減数分裂 / 相同組換え / 蛋白質創出 |
Outline of Annual Research Achievements |
相同組換えは組換えホットスポット配列に二重鎖切断を入れる酵素を以て遺伝情報を多様化する。そして生体は環境に応じてこの相同組換えを制御して環境変動への適応力を得ている。本研究課題では, 二重鎖切断制御に働く生化学機構を解明し、その知識により組換え開始自在制御実現と活用を目指している。昨年度までに、シロイヌナズナの減数分裂に必要なAtSPO11-1とAtSPO11-2が、植物由来の蛋白質の補助なしに二本鎖切断活性を持つこと、イネの3種のSPO11候補の内、シロイヌナズナに対応する蛋白質がないOsSPO11Dが、調べた植物由来の5種のSPO11候補中最も強い二本鎖切断活性を持つことを明らかにしてきた。そこで本年度はこれらの成果をより確実にする解析を進めた。発現レベルを確認するコントロール実験に加えて、特にこれまで難航していた、切断末端への共有結合に働くSPO11共通のTyrの置換変異をもつosspo11D Y213Fのハエ個体での発現に成功した。これらの解析の結果、OsSPO11Dの発現によるハエの減数分裂表現型の変化が確かにOsSPO11Dの二本鎖切断活性の結果であると結論付けることができた。従来の酵母での遺伝学的研究では、SPO11が二重鎖切断を行うには多数の補助蛋白質の共発現の必要性が示され、また、未だSPO11の二本鎖切断活性は実証されていない。SPO11自身が二重鎖切断活性をもつこと示したのは、全てのSPO11を通してこれが初めてである。一方、体細胞相同組換え開始制御の存在を検証するために、酵母ミトコンドリアで体細胞相同組換え開始制御に働く二重鎖切断活性を示したNtg1について研究を進め、Ntg1が二本鎖切断を導入する基質の条件を明らかにした。また、シロイヌナズナの核で働くNtg1のオルソログ候補の発現系を構築し、切断の特異性を酵母のNtg1の基質特異性と比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナ、イネ、ハエのSPO11をDNA結合活性をもつ状態での単離には成功したが、依然として二本鎖切断活性の検出には成功していない。一方、ハエ個体をもちいるバイオアッセイ系については、専門家の辛い批判に耐えるレベルにまで成熟させることができた。その結果、SPO11が補助因子なしでも二本鎖切断活性を示すこと、さらにイネ固有の第3のSPO11オルソログOsSPO11Dの存在を世界に先駆けて初めて示し、論文発表することができた。一方、これまで酸化損傷の程度を上げても単鎖切断しか生じないといわれていた酵母のNtg1が二重鎖DNAに二本鎖切断を入れる条件が明らかになってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
ハエ個体を用いるバイオアッセイ系による解析の結果、SPO11は補助因子なしでも二本鎖切断活性を示すことが明らかになった。そこで、発現系の選択と改良によって、二本鎖切断活性を示すSPO11の単離を目指す。また、SPO11と物理的に結合し、その活性を促進する因子の取得も試みる。一方、Ntg1が部位特異的な二本鎖切断を入れるための条件の解明を目指し、その成果を手掛かりに植物で同等の機能をもつ酵素の同定とそれによる植物個体での体細胞相同組換え開始制御系存在の確認を試みる。
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Research Products
(5 results)