2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22248014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松井 利郎 九州大学, 農学研究院, 教授 (20238942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 匡央 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90294909)
津田 孝範 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (90281568)
南部 伸孝 上智大学, 理工学部, 教授 (00249955)
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Keywords | 低分子ペプチド / 血管系疾患 / 生活習慣病予防 / 機能性食品 / MDシミュレーション / カルシウムブロッカー |
Research Abstract |
低分子ペプチドの生体調節機能を明示し、先端的食科学の構築を図ることを目的として、血管及びその他組織での生理作用発現性について、今年度は以下の項目を検討した。 1)血管機能改善作用:SHR由来血管平滑筋を用いて細胞内Ca^<2+>濃度調節機構の解明を行った。血管弛緩性/抗動脈硬化性ジペプチドであるTrp-His(300μM)を用いた各種刺激試験を実施した結果、Trp-HisはAngIIレセプターに対するアンタゴニスト作用はないこと、IP3レセプターを介した小胞体からのCa^<2+>放出作用はないことを明らかにした。 2)Ang II刺激VSMC細胞内のCaMK II活性の上昇がインヒビターであるKN-62と同様に明らかに抑制されたこと、さらに非特異的リン酸基タグ法を用いたWestern Blot解析によって膜電位依存性L型Ca^<2+>チャンネル(VDCC)のリン酸化量が有意に抑制されたことから、Trp-Hisは細胞外においてはVDCCへの結合により細胞外からのCa^<2+>の流入をブロックすること、細胞内ではCaMK II活性の抑制を介してCa^<2+>チャンネルのリン酸化を抑制し、チャンネルを閉じるよう働きかけることを初めて実証することができた。 3)平滑筋細胞内Ca^<2+>シグナル系において重要な伝達を担うタンパク質であるカルモジュリンに着目し、Trp-Hisとの仮想結合性をMDシミュレーションを構築することにより評価した。水を仮想溶媒としてAmberを用いて最適モデル化を図った結果、4000psecまでの範囲において、カルモジュリンタンパク質から脱離することなくリガンド結合し、その結合自由エネルギーは約40kJ/molであることを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低分子ペプチドがCaMK II/VDCCリン酸化経路を遮断する作用は、世界で初めての知見であり、各種臓器に局在するCaMあるいはCaMKII系の賦活による炎症性障害をペプチドが予防できる可能性が十分に示唆される結果を得てきた。他方、ペプチドがCaMK II活性を直接的に阻害するか、あるいはその賦活因子であるCa^<2+>-CaMの形成を阻害しているかについては不明であり、さらなる追究が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
Ca^<2+>-CaM阻害測定法を設定し、各種ペプチドによる阻害挙動をもとに形成阻害作用の有無と程度を明らかにする。また、MDシミュレーション法をもとに、他のペプチド構造体についてもCaM結合自由エネルギーを算出し、より高活性なペプチド構造の把握を図る。さらに、炎症系臓器でのペプチド作用をモデル化するため、サイトカイン刺激細胞におけるペプチドの抗炎症作用を評価する。
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Research Products
(10 results)