2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22248023
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
高橋 明義 北里大学, 水産学部, 教授 (10183849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 俊介 北里大学, 水産学部, 教授 (50222352)
天野 勝文 北里大学, 水産学部, 教授 (10296428)
水澤 寛太 北里大学, 水産学部, 講師 (70458743)
朝比奈 潔 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (10147671)
安東 宏徳 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60221743)
大平 剛 神奈川大学, 理学部, 准教授 (10361809)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光環境 / マツカワ / キンギョ / 視物質 / メラニン凝集ホルモン / 黒色素胞刺激ホルモン / 摂餌量 / 日間成長率 |
Research Abstract |
特記事項として,本年度は魚類生理に及ぼす特定波長光の効果に極めて重要な現象を認めた(第7項参照) (1)マツカワの成長にともなう視物質の発現:各種オプシンの眼球内mRNA含量が0歳から1歳にかけて減少する群(赤型オプシンLWS,青型オプシンSWS2Bと紫外線型オプシンSWS1)と変化しない群(緑型オプシン:RH2Bと青型オプシンSWS2A),さらに上昇する桿体オプシンRH1のグループに分かれた。(2)マツカワの各種オプシンの吸収極大: RH1, SWS1, SWS2,RH2,およびLWSの全構造を決定した。これらのオプシンのcDNAを用いて視物質を再構成し最大吸収波長を測定した結果,一部のオプシンが特徴的な値を示した。(3)特定波長光と成長および成熟関連遺伝子の関連:低水温期において,マツカワの脳内メラニン凝集ホルモンmRMA濃度が青および緑色光照射により低下した。(4)光強度とホルモン遺伝子発現:次年度に向けて飼育設備を整えた。(5)背地色と成長および成熟関連遺伝子の関連:黒背地馴致したキンギョの脳下垂体において,黒色素胞刺激ホルモンをコードする遺伝子の発現量が上昇することを認めた。(6)背地色とホルモン遺伝子の関連:次年度に向けて分析対象を絞り込んだ。(7)光環境と成長および成熟の関連:マツカワにおいて,水温が次第に上昇する春夏季(平均水温10℃以下)には赤色LED光照射群の摂餌量と日間成長率は青および緑の各LED光照射群よりも低かった。この差は水温の上昇とともに消失した。水温が次第に低下する秋冬季(平均水温17℃以上)には, LED光照射群間で摂餌量と日間成長率に差は見られなかった。しかし水温の低下に伴って(平均水温13.3℃),赤色LED光照射群と環境光照射群では摂餌量と日間成長率が減少した。さらに水温が低下したところ(平均水温8.8℃),これらの差は拡大した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度を75%と自己評価する。当初の目的は(I)特定波長光が魚類の食欲・成長と成熟に関わる脳ホルモンの発現調節に及ぼす効果の解明、さらに、(II)太陽光から有用な特定波長光を選別することに基づく、新しい効率的魚類増産システム(光養殖)の構築とした。目的達成のための主な研究内容を以下の通りとした。(A)食欲・成長と成熟に関わる様々な魚類脳ホルモンの発現に対する特定波長光の影響の解明。(B)魚類の摂餌行動と性行動に対する、特定波長光の影響の解明。(C)色覚を司る網膜タンパク質の機能解明、および特定波長光が各種脳ホルモンの発現を調節するしくみの解明。(D)特定波長光と各種水産重要魚種の食欲・成長と成熟の関連の解明。 それぞれの研究項目における成果の概要は以下の通りである。(A)マツカワにおいてメラニン凝集ホルモン遺伝子発現が特定波長光の影響を受けるという知見を得た。これを現在確認中である。(B・D)特定波長光が魚類の行動に顕著に影響することを認めた。特にマツカワにおいて,短波可視光の成長促進効果が水温10℃以下で顕著に発揮されることを見出した。この成果は学術と応用の両面において極めて重要である。したがって当初計画に含めていた特定波長光と成熟・性行動との関連に関する研究に先んじて進めることとする。 (C)マツカワのオプシンについてcDNAクローニングと発現タンパク質を用いた機能解析を同時進行中である。最終年度に完了予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
『現在までの達成度』の項で述べた通り,当該継続研究課題の進行状況は極めて順調である。当初の予想を上まわる成果が項目B・Dにおいて得られた。それは低水温における短波可視光の顕著な成長促進効果である。これを学術面において深く追求して,視覚系で受容された光環境が神経・内分泌系を介して成長を刺激する過程を解明することを新たな到達目標とする。この目標を達成することにより,光環境と魚類生理・行動の関係の理解が深まる。魚類生産への応用の期待も高まる。
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Research Products
(38 results)