2010 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア大陸部における宗教の越境現象に関する研究
Project/Area Number |
22251003
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片岡 樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (10513517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
速水 洋子 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (60283660)
林 行夫 京都大学, 地域研究統合情報センター, 教授 (60208634)
小林 知 京都大学, 東南アジア研究所, 助教 (20452287)
村上 忠良 大阪大学, 世界言語研究センター, 准教授 (50334016)
中西 裕二 立教大学, 観光学部, 教授 (50237327)
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Keywords | 東南アジア / 国家 / 民族 / 宗教 / 制度化 / 越境 |
Research Abstract |
本年度は初年度にあたるため、東南アジア大陸部の宗教現象について、(1)国境を越える、(2)民族を越える、(3)宗教間の境界を越える、の三つの軸から考察するにあたり、そこに存在する問題点について論点の整理を行った。平成22年度は7月および2月に研究会を行い、各自の問題関心をすり合わせながら、共有する問題点の抽出に努めた。そこからは次のような論点が浮上した。まず第一には、上記の三つの越境領域(国家、民族、宗教)のいずれにおいても、越境に逆行する傾向が近年顕著になっていることが明らかになった。すなわち(1)については宗教運動に対する国家の管理の強化、(2)については民族境界の固定、(3)については制度宗教への囲い込みの強化という傾向である。第二の論点としては、今述べたような傾向をふまえるならば、現在我々の目の前にある越境という現象というのは、国家、民族、宗教それぞれの分野での囲い込みを前提にして初めて成り立つものであり、そうであるならば、この囲い込みのプロセスを問うことなしに越境だけをナイーブに主題化することは、単に既存の制度の追認になるだけで学問的な新たな挑戦とはなりにくいという問題が抽出される。それへの対応として考えられるのが第三の論点、すなわち、越境を二つの次元に分けるという視点である。つまり制度への囲い込み以前の相互浸透状態(国家、民族、宗教のそれぞれのレベルにおける)としての越境(仮に越境1と呼ぶ)を措定し、その後に制度への囲い込みが生じ、さらにその隙間をすり抜けるかたちで生起しつつあるのが現在の越境(仮に越境2と呼ぶ)である。こうしたかたちで論点を整理することで、二年目(平成23年度)に各自のフィールドで検証すべき命題がより明確になった。
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Research Products
(32 results)