Research Abstract |
研究対象は中国の石造遺跡である敦煌莫高窟および龍游石窟である。本研究の目的は,壁画,石窟自体に影響を与える岩盤中の水分環境把握のための観測手法の構築と石窟の安定性を評価するための分析手法を確立し,中国側研究者と共に,この技術を同様の課題を持つ石造遺跡の保存に生かしていくことにある。なお本研究は日本,中国,米国の経験豊富な研究者および若手研究者,技術者で構成されていることから,若手の国際的な研究交流,技術向上についても当研究目的の一つとした。H22年度の研究成果は次の通りである。 ●敦煌調査 1.崖上ボーリング調査孔の孔内壁面スキャニングおよび環境観測 2010年9月の調査において,莫高窟崖上の3本のボーリング孔(各孔120m程度)の壁面をボアホールスキャナにより観察した。また,孔内の深度方向の温度および相対湿度を計測した。これらの情報はH23年度に行う孔内観測システム構築の際の基礎データとする。 2.石窟内部における常時微動観測準備 莫高窟108,233,235,237,242,243,272,71,85窟において試験的に常時微動測定を実施し,対象石窟および計測手法に関する検討を行った。 3.周辺の構造運動に関する調査 敦煌研究院から周辺地域の地震活動に関するヒアリングを行った。 ●龍游調査 1.環境観測システムの構築 2010年8月の調査において,龍游石窟の2号窟,3号窟および外気の温度,湿度(全11地点)が常時観測できるシステムを構築した。 無線センサネットワーク技術を採用することで,電池による長期観測を可能とし,データはインターネットを介して共同研究者がいつでも閲覧,回収が行えるシステムとした。 2.石窟の構造物診断 1号窟,2号窟において試験的に常時微動測定を実施し,対象石窟および計測手法に関する検討を行った。 安定解析を行うため,3次元スキャナによる形状計測データから石窟のモデリングを行った。
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