2012 Fiscal Year Annual Research Report
抑制性シナプスの新たな制御経路としての低分子量G蛋白質ARF6の機能解明
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22300114
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
阪上 洋行 北里大学, 医学部, 教授 (90261528)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 抑制性シナプス / シナプス可塑性 / 低分子量GTP結合蛋白質 / シナプス後肥厚部 |
Research Abstract |
本研究は、我々が見出した抑制性シナプスのシナプス後膜に局在する低分子量GTP結合蛋白質ARF6に対するグアニンヌクレオチド交換因子であるBRAG3 (別名 IQSEC3, synArfGEF)の抑制性シナプスにおける機能を解剖学的に明らかにすることを目的とする。平成24年度は以下の点を明らかにした。 (1)網膜におけるBRAG3の発現局在:網膜における免疫組織学的解析を行った結果、BRAG3免疫反応は内網状層に点状に分布し、抑制性シナプスの足場タンパク質であるgephyrinと高い頻度 (83.9%)で共存を示し、さらにGABA(A)受容体およびグリシン受容体の一部と共存を示した。一方、BRAG3陽性反応は、興奮性シナプスの足場タンパク質であるPSD-95との共存は示さなかった。さらに免疫電顕解析により、BRAG3が内網状層の対称性シナプスのシナプス後膜に局在することを見出し、網膜においてもBRAG3が抑制性シナプスにおいて機能することが明らかになった。以上の研究成果は、Journal of Comparative Neurologyに掲載された (Sakagami et al., 2013)。 (2)BRAG3のスプライバリアントの単離と発現解析:ゲノム解析とPCR法により、BRAG3がC末領域のスプラシングの相違による3つのバリアント(BRAG3a, BRAG3c, BRAG3d)が存在することを見出した。BRAG3aの152アミノ酸よりなり特異的なC末領域にはプロリンが豊富でC末端にはPDZ結合モチーフが存在する一方、新たに同定したBRAG3cとBRAG3dの23、20アミノ酸からなるC末領域には既知のモチーフは認められない。今後、バリアントによる局在発現の差異の有無をin situハイブリダイゼーション法と特異抗体の作製による免疫組織化学法により検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BRAG3が網膜においても抑制性シナプスの後膜に局在することを見出し、Journal of Comparative Neurologyに受理された(Sakagami et al., 2013)点は高く評価できる。さらに、BRAG3のスプライスバリアントの同定し、また、BRAG3の抑制性シナプスにおける局在機構に関して、ロンドン大学のRobert J. Harvey教授との共同研究を開始している。以上の点で、本研究計画内容を着実に進展させているものと高く評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
実施計画に従って以下の研究内容で進める。 (1)BRAG3の抑制性シナプス局在機構の解明:BRAG3がジストロフォンと結合することを見出した(J. Neurochem., 2011)が、この相互作用のBRAG3の抑制性シナプスへの局在への関与を検証するために、ジストロフィン欠損マウス(mdx)を用いて、BRAG3のシナプス局在の変化の有無を免疫組織学的に精査する。 (2)BRAG3のスプライスバリアントの発現局在解析:バリアントによる局在発現の差異の有無をin situハイブリダイゼーション法と特異抗体の作製による免疫組織化学法により検討する (3)ARF6経路の抑制性シナプス形成における機能解明:初代神経培養細胞を用いてRNA干渉法によりBRAG3-ARF6経路の発現を抑制した場合の抑制性シナプスの形成への影響を、抑制性シナプスの密度、抑制性神経伝達物質受容体(GABA(A)受容体、グリシン受容体)その足場蛋白質gephyrinのシナプス集積及び膜上への発現の変化の有無などを指標にして検討する。 (3)ARF6経路の抑制性シナプスにおける分子ネットワークの解明:ARF6及びBRAG3との結合分子を同定することにより分子ネットワークを明らかにする。実験方法として酵母ツーハイブリット法によりARF6及びBRAG3を餌にして脳cDNAライブラリーをスクリーニングする。また、ARF6及びBRAG3に対する特異抗体を用いた免疫沈降法により得られた免疫沈降物を質量分析装置により複合体を形成する分子の網羅的な単離を試みる。
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Research Products
(15 results)