2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22300132
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
粂 和彦 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (30251218)
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Keywords | 睡眠 / 概日周期 / ショウジョウバエ / ドパミン |
Research Abstract |
今年度は、本研究の結果の論文5報と、関連する共同研究結果の論文3報を発表した。ドパミンはショウジョウバエの睡眠覚醒制御の中心的な役割を担うが、このドパミン・シグナルが過剰で睡眠が短縮する不眠(fumin)変異株を用いた研究から、1.活動の時系列解析で、ドパミンが活動継続時間ではなく、休息継続時間を制御していること(Ueno et al.PLoS One,2012a)2.ドパミンはエネルギー代謝や温度感受性の制御にも関わること(Ueno et al.PLoSOne,2012b)、3.不眠変異株が高栄養条件下で、さらに睡眠が短縮し寿命にも影響すること(Yamazaki et al.BBRC2012)を発表した。また、ドパミンニューロンのモザイク解析から、覚醒制御を行うドパミン回路を同定した(上野ら、投稿中)。これらの研究結果によって、本課題の目的である、睡眠覚醒制御機構の主要な部分については、詳細が解明されつつあり、今後、覚醒制御を行うドパミン神経回路系の上流と下流を同定することで、神経回路レベルでの睡眠制御機構が解明できると考えられる。また、新規の睡眠関連遺伝子としては、カルシウム依存性脱リン酸化酵素のカルシニューリンの同定(Tomita et al.J Neurosci2011)、リン酸化酵素のc-Jun N-terminal Kinase (JNK)の同定(Takahama et al.BBRC2012)を発表した。これらの遺伝子の作用部位の解析で、これらがシナプスレベルで機能する可能性を示した(冨田ら、未発表)。他の新規睡眠関連遺伝子についての解析も進めている。これらの研究から、睡眠の制御系ではなく、睡眠の実行系と呼べるシナプスレベルで睡眠制御についても解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新規睡眠関連遺伝子を複数単離したこと、ドパミンの覚醒機能を行動学レベル、生理学的レベル、さらに神経回路のレベルで詳細に解析できたこと、栄養や寿命と睡眠覚醒の関係を解析したことから、研究目的である睡眠覚醒制御機構の解明に近づいた。ま単一神経細胞レベルでのた、計画の2年目に結果の一部を、複数の論文として公表できた。
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Strategy for Future Research Activity |
ドパミンを中心に睡眠覚醒制御の神経回路を解析して、単一神経細胞レベルでの回路同定を進める。また、未発表の新規睡眠関連遺伝子についても、その機能部位や、タンパク質機能の解析から、睡眠制御への関与の仕方を解析する。電気生理を用いた解析については、論文公表を目指す。最終年度であるが、計画の変更を必要とするような問題点は特にない。
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