2012 Fiscal Year Annual Research Report
コンピテンス基盤型科学教育の創造ー初等・前期中等教育を中心にー
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22300266
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 誠 北海道大学, 高等教育推進機構, 教授 (60322856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 雄作 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 教授 (00160549)
人見 久城 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (10218729)
古屋 光一 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (10374753)
細川 和仁 秋田大学, 教育推進総合センター, 准教授 (30335335)
荻原 彰 三重大学, 教育学部, 教授 (70378280)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | コンピテンス / 科学教育 / 能力 / カリキュラム / 評価 / 人材育成 |
Research Abstract |
本年度は4年間の研究期間の3年目に当たる。研究会は新規参加者を含め現職教諭5名のWGと合同で3回開かれ、国内外の文献研究や海外調査から得た知見を元に、これからの日本の科学教育に求められるコンピテンスの集積と分析、検討を行った。 主なものは以下の通りである。 まず、北海道教育大のプロジェクトでまとめた「探究(Inquiry)とその指導方法入門」を元に、探究の問題点や構成主義との関わり、問題解決との位置、探究の要素から求めるべきコンピテンスについて検討を行った。その結果探究をめぐる様々な問題点が明らかになった。また、三重大学医学部のPBLチュートリアル教育の調査と分析を行った。アウトカム・ベイスドが医学教育の中で浸透しつつあり、医学的知識やスキル、コミュニケーション力が求められていること、PBLは伸ばすべき資質や目的が明確にないることなど、コンピテンス基盤型教育を目指す上で新しい知見を得ることができた。国外調査では、カリフォルニア大学ローレンスホール・オブ・サイエンス、および全米理科教師協会(NSTA)全米大会、ワークショップMaking Sence of Scienceを調べ、アメリカの能力育成についての情報を得ることができた。またデラウエア大学のコンピテンス基盤型医学教育を調査し、アメリカのさらに進んだ教育システムが明らかになった。一方、ナショナルコアカリキュラムの改訂間近のフィンランドも継続的に調査し、コンピテンス基盤型教育の編成について、担当者と議論を重ねることができた。これらの知見を元に、第6回、第7回の研究会でこれからの日本の科学教育に求められるコンピテンスを整理し分類する作業を繰り返した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これからの日本の科学教育に求められるコンピテンスの集積について、各大学の研究分担者は精力的に活動し、新しい情報を集めてきている。例えば、三重大学医学部のPBLチュートリアル教育の調査は、求めるコンピテンスが明確にされ、我々が目指すコンピテンス基盤型科学教育の創造に大きな手がかりとなった。また、三重大学とのコンタクトにより、医学教育改革の先進国であるアメリカ・デラウエア大学のコンピテンス基盤型教育を調査することが可能となった。また、全米理科教師協会(NSTA)全米大会やフィンランドの国家教育委員会での調査により、さらに進んだコンピテンスを明らかにした教育改革の様子が明らかになった。これにより、研究を進める上で情報を得ることができた。また、研究分担者の一部が「探究」の分析を進め、問題解決との位置、探究の要素から求めるべきコンピテンスについて、問題点を含めて分析を進めることもできている。 一方、現職教諭5名のWGと合同で研究会が3回実施したが、課題意識が高く、国内外から集積されたコンピテンスの分析に対して、現場感覚から様々な指摘や建設的な意見が出された。それにより、現時点での日本の科学教育に求められるコンピテンスの全体像が明らかにしつつある。 遅れている点を上げるならば、文化的・歴史的側面でのコンピテンスの分析と、初等中等教育の学習コンテンツへの具体的な適用であり、現在検討しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる本年は、3年間で明らかにすることができたコンピテンスを元に、具体的な授業の文脈でそれを起動させ、検証することである。そのため、現在研究協力者が勤務する附属中学校で、パイロットスタディとして授業実践すべく準備を進めているところである。5月に予定している第8回研究会では、どの単元で、どのような教材を使って実践していくか、その評価方法はどのようにするかなどの具体的な検討を予定している。 一方、文化的・歴史的側面でのコンピテンスの分析も進め、科学教育のコンピテンスとの関係を明らかにする。 これらを元にして、9月の日本科学教育学会では「課題研究」の中で、本科研での研究成果を公開し、広く意見を求める予定である。その後、第9回、10 回の研究会で、学会や授業実践、また2014年からフィンランドで導入されるコンピテンス基盤型教育に関する知見を全員で分析し、最終報告としてまとめる予定である。
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Research Products
(17 results)