2011 Fiscal Year Annual Research Report
伝統工芸技能指導者育成モデルの研究-外在主義的知識観による学びの日常化-
Project/Area Number |
22300271
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
小松 研治 富山大学, 芸術文化学部, 教授 (10186794)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小郷 直言 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (70115137)
小松 裕子 富山大学, 芸術文化学部, 准教授 (30212468)
|
Keywords | 技能伝承 / 環境 / 外在主義 / 可視化 / 痕跡 |
Research Abstract |
職人の技能は、身体の外に用意する道具や環境の中に知識や情報として配置されており、多くの伝承すべき工夫や知恵を作業環境の中から学び取ることができる。本研究では、こうしたアプローチを「外在主義的な知識観」と称し、技能を可視化することにより、わが国の伝統工芸モノづくりにおける効果的な継承・教育方法を刷新することを目指している。技能の可視化とは、その熟練度を賛美することではなく、作業の段取り、段取りのための準備、仕事環境、道具や材料の配置、作業を効率よく進めるための自作のジグ、模型やモノの配置、安全や失敗の回避のための環境を明確にすることである。 本年度は5年計画の2年目として、技能を伝える(伝承)技術について、作業環境を中心に、道具、段取り、素材、補助具などの取材や調査を進めた。とくに、海外においては、スイスでは機械時計の技能伝承、ドイツでは木工を中心にしたマイスター制度に的を絞り、企業、工房、教育機関などを視察し、伝承方法や課題を調査し、日本と比較する資料を得た。また、引き続き大学教育環境に可視化した教材(椅子制作工程ボード)を配置したほか、学生へ教材の効果を図るアンケートを継続実施した。 そのほか、これまでの調査・研究を踏まえ、技能を神秘化せず目に見えるものとして捉え可視化する重要性や外界の情報を獲得する力(使用者の技術)について大学紀要にて明文化した。また、映像による可視化のために情報のデジタル化を進めるほか、技能者(研究代表者)の制作記録(素材選びから作業環境も含めた)を作品展示会場にて公開した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、計画通り、技能を伝える技術の調査を国内だけでなく海外(ドイツ・スイス)で行うことができた。また、具体的な可視化物の制作をはじめ大学教育環境に設置した教材として効果を図ることができた。さらに、これまでの研究成果について紀要や展示会場にて公開した。 以上のことからおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、引き続き伝承技術の取材・調査を実施する。特に作業環境と制作工程を記録することで環境と技能伝承の関係性を検証する。また、技能を可視化した教材を大学教育環境に設置しその効果を分析する資料を得る。 平成25年度、26年度には、上記調査を継続しながら、伝承者育成モデルの構築をはかる。また成果を書籍、展示会、学会発表のほか、web上でも公開していく予定である。
|